漫画のオノマトペを楽しむ|音以外も表す文字
公開日
絵の上に置かれた文字は、鳴っている音だけを表しているわけではありません。動き・状態・感覚・雰囲気も同じ形で書かれます。この記事のためにこしらえた場面へ同じ語を置いて、まわりが変わると読みが変わることを見ます。一語一義では覚えません。
音だけを表しているわけではない
絵の上や横に、大きめの文字が置かれていることがあります。ふつう、音を表すものだと思って読みます。
ところが、鳴っていないものにも同じ形の文字が置かれます。 何も聞こえていない場面にも、体の内側の感じにも、その場の空気にも付きます。
だから、まず音かどうかを確かめずに読みます。 音として読んで合わなければ、別の読みへ移ればいいだけです。
同じ語でも、まわりが変われば読みが変わる
図では、語のほうを中央に一度だけ置いています。 左右に置いたのは、この記事のためにこしらえた場面です。
左と右で、同じ語が別の読みになります。 語そのものは一文字も変わっていません。
つまり、読みを決めているのは語ではなくまわりです。 ここが分かると、知らない語が出てきても止まらずに済みます。
左右に上下はありません。 片方を本来の使い方として立てることもしません。
音・動き・状態・感覚・雰囲気の五つ
| 読み | 何を表すか |
|---|---|
| 音 | 実際に鳴っている |
| 動き | 体や物の動き |
| 状態 | 続いている・途切れた |
| 感覚 | 触った感じ・体の内側 |
| 雰囲気 | 場の空気 |
この五つに、どの語が入るかは決まっていません。 図に語を一つも添えていないのは、そこを崩さないためです。
一つの語が、五つのうちいくつにもまたがります。 場面ごとにどれかへ寄る、という動き方をします。
五つに順番もありません。 音が基本で他が応用、という関係でもありません。
音として読むとき
実際に鳴っている場合は、いちばん素直に読めます。
物が触れ合った、風が当たった、声が上がった。絵の中に音の出どころがあれば、たいてい音です。
出どころが見当たらないのに音として読むと、引っかかります。 そのときは次の読みへ移ります。
大きく書かれているから大きな音、とも限りません。 静かな場面で大きく書かれることもあります。
動きとして読むとき
何かが動いたことを表している場合があります。 音は鳴っていないことがあります。
体が動いたところに付きます。 立ち上がる、振り向く、走り出す。動きの向きに沿って置かれることがあります。
物が動いたところにも付きます。 落ちる、転がる、開く。
止まったところにも付きます。 動きが終わった瞬間にも文字が置かれます。
| 動きの種類 | 置かれる場所 |
|---|---|
| 体の動き | 動いた人のそば |
| 物の動き | 動いた物のそば |
| 止まる | 止まった瞬間 |
絵のほうにも同じ動きが描かれています。 文字と絵が同じことを言っている形です。
状態や感覚として読むとき
続いている状態や、体の内側の感じを表していることがあります。
続いている状態。 降り続いている、光り続けている、揺れ続けている。一瞬ではなく幅があります。
途切れた状態。 止まった、消えた、途切れた。そこで何かが終わっています。
触った感じ。 ざらつき、ぬめり、硬さ。手や足が触れているところに付きます。
体の内側の感じ。 痛み、こわばり、熱、めまい。外からは見えないものです。
内側の感じは、その人の近くに置かれます。 誰の感じかが、置かれた場所で分かります。
外から見て分からないものほど、文字のほうが受け持ちます。 絵では描きにくいからです。
雰囲気として読むとき
その場の空気を表していることがあります。 誰も動いていない場面にも置かれます。
静けさ。 何も鳴っていないことを、文字で書く形です。
張りつめた感じ。 これから何か起きそうな場面に置かれます。
気まずさ。 人と人のあいだの空気です。
場の広がり。 広い場所、高いところ、暗いところに置かれることがあります。
雰囲気の文字は、画面全体にかかることが多くあります。 誰か一人のそばではなく、背景に置かれます。
読み取れなくても構いません。 場面の様子から、たいてい同じことが伝わります。
まわりのどこを見るか
まわりを見ると言っても、どこを見ればよいかが決まっていないと動けません。 見る先を挙げます。
音の出どころ。 触れ合っている物や、口を開けている人がいるかを見ます。あれば音です。
文字のすぐそばにあるもの。 人のそばなら、その人のことです。物のそばなら、その物のことです。
前のコマ。 そこで何が起きたかが、この文字の読みを決めていることがあります。
人の様子。 顔や姿勢が、感じや空気のほうを示していることがあります。
| 見る先 | 寄りやすい読み |
|---|---|
| 音の出どころ | 音 |
| 動いている物 | 動き |
| 人のそば | 感覚 |
| 背景 | 雰囲気 |
一つ見れば決まることもあります。 全部を見なくて構いません。
どれを見ても決まらないことがあります。 そのときは決めずに先へ進めます。
音かどうかを最初に分ける
五つのうち、音だけは先に分かれます。 出どころが絵の中にあるかどうかで決まるためです。
音でないと分かった時点で、残りは四つに絞れます。 そこからは、そばに何が描かれているかで寄ります。
一冊を通して見ると、音以外の読みのほうが多い作品もあります。 音として読める文字だけを追っていると、半分も拾えません。
音として読めた場合も、それだけとは限りません。 同じ文字が、動きや感じを同時に受け持っていることがあります。
語の意味で決めつけないこと
手がかりになるのは、その語のすぐそばに描かれているもののほうです。
置かれた場所も手がかりになる
同じ語でも、紙面のどこに置かれているかで読みが変わります。
人に重ねて置かれている。 その人のことを表しています。動きか、体の内側の感じです。
物のそばに置かれている。 その物が出した音か、その物の動きです。
背景に大きく置かれている。 場のほうにかかります。空気や広がりです。
枠の外にはみ出している。 画面に収まらない大きさとして置かれることがあります。
囲みの中に入っている場合は別です。 それは話している言葉として置かれています。
置き場所だけで決まるわけではありません。 まわりと合わせて見ます。
一語一義では覚えない
覚え方としては、いちばん外れやすいやり方です。
同じ語が、静かな場面にも激しい場面にも出てきます。一つの意味に結び付けてしまうと、そのどちらかで必ず引っかかります。
語のほうを覚えるより、まわりを見る癖のほうが役に立ちます。 まわりさえ見ていれば、初めて見る語でも読めます。
読めない語があっても、飛ばして進んで構いません。 絵のほうにたいてい同じことが描かれています。
同じ場面に何語も並ぶとき
一つの場面に、文字がいくつも置かれていることがあります。
それぞれ別のことを表していることがあります。 音と、動きと、空気が同時に置かれる形です。
同じことを重ねて表していることもあります。 大きさを変えて二度置かれることがあります。
読む順は決まっていません。 目に入った順で構いません。
全部を読み取らなくても進めます。 一つ分かれば、場面は追えます。
数が多いほど大きな出来事、とは限りません。 静かな場面に何語も置かれることがあります。
作品ごとの言い方を、よそへ広げない
作品の中だけで通っている言い方があります。
その作品を読み続けていると自然に分かってきますが、それは、その作品の中での決まりです。
別の作品へ持っていくと合いません。 同じ語が、まったく違うものを表していることがあります。
一般の決まりとして書き留めないでおきます。 作品ごとに読み直すほうが早く済みます。
文字の描き方の話ではない
この記事では、どう書くかには触れません。
形をどう崩すか、どのくらいの大きさにするか、どこへ置くか。書く側の手つきについては、この記事は何も述べません。
図に置いた語も、書き方の見本ではありません。 読みが変わることを見せるために、左右で同じ形のまま置いてあります。
文字を書く側に関心が向いているなら、別の記事のほうが合います。
読めない語に出会ったとき
見たことのない語が出てくることがあります。 そのときの進め方を置きます。
まず音として読んでみます。 合えばそこで済みます。
合わなければ、そばに何が描かれているかを見ます。 人か、物か、背景かで読みが寄ります。
それでも決まらなければ、前のコマを見ます。 直前に何が起きたかで決まることがあります。
決まらないまま飛ばして構いません。 絵のほうに同じことが描かれています。
後の場面で同じ語が出てきたら、そこで分かることがあります。 二度目のほうが読みやすくなります。
辞書で引き直さなくても、読み進められます。
集中線や語りを読む記事との境目
隣に並びそうな記事があるので、持ち場を分けておきます。
線で強調を読む記事は、別のところを扱っています。 あちらが見るのは線があるかないかで見え方がどう変わるかでした。
声に出した言葉とそうでない言葉を読み分ける記事も、別に立っています。 そちらが扱うのは言葉そのものの出どころです。
コマを追う順の記事とも重なりません。 あちらはページの中での進み方の話です。
読み・場面・固定・作品差を見る
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 読み | 音以外も見たか |
| 場面 | まわりと合わせたか |
| 固定 | 一つに決めてないか |
| 作品差 | よそへ広げてないか |
| 文字 | 描き方に寄せてないか |
気になった一語で試す
いま読んでいる作品で、絵の上に置かれた文字を一つ選びます。
まず、音として読んでみます。合わなければ、その語のまわりに何が描かれているかを見ます。
動きか、状態か、感じか、空気か。 そのどれかに当たれば、その場面はもう読めています。