漫画の小道具を演出に使う|行動と意味を持たせる
公開日
出しただけの小道具は場面に残りません。同じ一つの物が前の場面・行動・後の場面を通して追えるように置き、形は変えずに扱い方だけを動かす手順をまとめます。似た別の物へ差し替えると追えなくなります。
出したのに意味が残らない
場面に物を置いても、読み終えたあと覚えていないことがあります。
一度出しただけだからです。 出した物が、そのあと何にも関わっていません。
そこで、同じ物を前と後で追えるようにします。 あいだに行動を挟みます。
行動・記憶・変化の三つ
| 担うもの | そこで起きること |
|---|---|
| 行動 | 手に取る |
| 記憶 | 前を思い出す |
| 変化 | 扱い方が変わる |
行動は、その物に触れることです。 置いてあるだけでは行動になりません。
記憶は、前に出たことを思い出させる働きです。 一度目があるから二度目が効きます。
変化は、同じ物の扱い方が前後で違うことです。 物ではなく人のほうが変わります。
同じ物を前と後で追う
三コマの小道具は、同じ一つの形を使い回しています。 売られている品をなぞったものではありません。
前の場面では、ただ置かれています。 目に入るだけで構いません。
あいだの行動で、誰かが手に取ります。 ここで物と人がつながります。
後の場面では、同じ物が別の扱われ方をしています。 形は変わっていません。
物は変えずに置かれ方を変える
似た別の物へ差し替えると、読み手は追えません。
形が同じだから、二度目に出たときに「あれだ」と分かります。 追跡できるのが要点です。
置かれ方は変えて構いません。 持ち主が変わる、しまわれる、渡される、といった形です。
変わったのは物ではなく、人と物の関係です。
見た目を変えて別物にしない
残すのは、形を変えずに追えるようにすることと、あいだに行動を挟むことの二つです。
追わせる物をどう選ぶか
場面にある物のうち、どれを追わせるかを決めます。
人が手に取れる大きさの物にします。 動かせない物は、行動が挟めません。
持ち主が変わり得る物にします。 誰のものか決まりきっていると、関係が動きません。
形が覚えられる物にします。 覚えられない物は、二度目に出ても気付かれません。
| 選ぶ目 | 満たすこと |
|---|---|
| 大きさ | 手に取れる |
| 持ち主 | 変わり得る |
| 形 | 覚えられる |
三つそろわなくても構いません。 一つ目が満たせれば、あとは書き方で補えます。
意味を持たせない小道具もある
場所を示すためだけに置く物があります。
それらに意味を足すと、読み手が追いはじめます。 追った先に何も無いと、置いていかれます。
追わせたい物を一つに絞ると、残りは背景として扱えます。 数を決めておきます。
背景の物は、形が前後で違っても構いません。
あいだに挟む行動の形
「手に取る」だけが行動ではありません。
渡す。 持ち主が変わります。関係の変化がそのまま出ます。
しまう。 見えなくなります。次に出たときが二度目になります。
壊す・無くす。 形が残らないので、追跡はそこで終わります。終わらせたいときに使えます。
直す。 形は同じで、扱い方だけが変わります。
どの行動も、同じコマの中で見せます。 説明で済ませると、物と人がつながりません。
二つ以上を同時に追わない
二つ同時に追わせると、本筋がどちらか決まりません。
追わせる物を一本につき一つへ絞ると、読み手が覚えます。 二つ目は前の物が終わってからです。
役割が違えば二つでも成立します。 片方を大きく、片方を小さく扱います。
迷ったら、行動が挟まるほうを残します。
説明場面を減らす記事との受け持ち
読者に必要な情報を残す記事は、同じ場面を寄せる側にあります。
あちらが減らすのは重なった説明、ここで増やすのは物と人の関わりです。
物で示せる情報は、説明の場面を一つ減らせます。 二つは続けて使えます。
説明が重なっていなければ、ここだけで足ります。
トーンの記事は面の話
明暗と質感を使い分ける記事は、画面の作り方を扱います。
あちらは面の濃さ、ここは物そのものの扱いです。
同じ物でも、置かれた面の濃さで見え方が変わります。 追跡が切れない範囲で使えます。
トーンを貼らない作りでも同じ手順が使えます。
二度目をどこに置くか
一度目と二度目が近すぎると、追う時間がありません。
あいだに別の場面を挟みます。 忘れかけたところで出ると効きます。
離しすぎると忘れられます。 思い出せない物は、二度目になりません。
三度目を置くなら、二度目より短い間隔にします。 近づくほど、終わりが近いと読まれます。
間隔に決まった長さはありません。 話の長さで変わります。
形・位置・意味を確かめる
| 追うところ | 確認すること |
|---|---|
| 形 | 前後で同じか |
| 位置 | 誰が持つか |
| 意味 | 変わったか |
一つの物だけ、前後を並べる
いま印象に残っていない物が一つあるなら、それが出るコマを二つ並べます。
あいだに誰かが手に取るコマを入れます。 形は変えません。
二つ並べて追えるなら、そこで足ります。 ほかの物は背景に置いたままで構いません。