自然な漫画のセリフを作る|人物の目的に合わせる
公開日
台詞が説明に寄ってしまうとき、その人物が何のために口を開いたかを先に決めます。同じ一つの情報を目的の違う三通りの言い方で並べ、渡る内容を変えずに話し方だけを動かす手順をまとめます。自然な話し方に決まった型はありません。
説明はできているのに人物が見えない
読み返すと、必要なことは全部書いてあるのに誰の言葉でもない、と感じることがあります。
不足しているのは中身ではありません。 言う理由が人物の側に無いからです。
そこで、その人物が何のために口を開いたかを先に置きます。 言い方はそこから出ます。
言う順・語尾・長さが変わる
| 変わるところ | 何で決まるか |
|---|---|
| 言う順 | 目的 |
| 語尾 | 関係 |
| 長さ | 状況 |
言う順は目的で決まります。 断りたいのか、相手を動かしたいのかで先に出す語が変わります。
語尾は相手との関係です。 同じ人物でも、相手が変われば同じ形にはなりません。
長さは場の状況です。 急いでいれば短くなり、待てる場なら回り道もします。
同じ情報を三通りで言う
三通りの言い方は、こちらで書き起こした台詞です。 作品から引用した台詞は一つも含みません。
渡している情報は三通りで共通です。 差を付けたのは目的の側に限ります。
読み手が受け取る事実は変わりません。 変わるのは、その人物がどう見えるかです。
三つに順位は付きません。 場面で選びます。
目的が決まると語尾も決まる
先に語尾から決めると、目的と食い違うことがあります。
口調表だけで書くと、どの場面でも同じ話し方になります。 目的が入っていないからです。
目的を置いてから語尾を選ぶと、同じ人物でも場面ごとに揺れます。 その揺れが人らしさになります。
揺れすぎて別人に見えるなら、関係の側を固定します。
自然な話し方を型にしない
覚えておくのは、目的を先に置くことと、渡す情報を変えずに言い方だけ動かすことの二つです。
説明のための台詞も要る
読み手に渡さなければ進まない情報があります。
それを言う理由を人物側に作れば、説明でも浮きません。 聞き返す相手を置く、間違えて覚えている人物に言わせる、といった形です。
理由が作れないなら、絵や場面の側へ回せます。 台詞の側で抱え込まなくて済みます。
説明だから外す、という判断にはしなくて済みます。
目的を一行でどう書くか
目的を置くと決めても、書き方が決まらないと止まります。
「相手に◯◯させたい」の形で書きます。 させたいことが動詞で出ます。
「◯◯と思われたくない」の形でも書けます。 避けたいことから決まる台詞があります。
「◯◯を確かめたい」の形もあります。 答えを待つ台詞になります。
気持ちだけでは目的になりません。 「不安だ」からは語順が決まりません。
一行で書けないなら、その場面ではまだ決まっていません。 場面の側を見直せます。
言い直させてよい
一度で言い切らせなくて構いません。
言いかけて止める、言い直す、相手に遮られる。 いずれも会話として通ります。
言い直しは字数が増えますが、人物の迷いが残ります。 渡す情報は同じままです。
紙幅が足りないときは、迷いのほうを絵へ回せます。
直前に起きたことで変わる
同じ目的でも、直前に何があったかで言い方が動きます。
断られた直後。 言葉が減るか、逆に増えて理由を並べます。
急いでいる場面。 前置きが落ちて、用件から始まります。
人が増えた場面。 言える範囲が変わり、途中で止まります。
直前を書き出してから台詞を書くと、揺れが自然に出ます。
直前が無い場面もあります。 その場合は目的と関係だけで決まります。
口調を書き分ける記事は差の話
口調を書き分ける記事は、人物どうしの差を作る側にあります。
向こうは複数の人物を区別する話、ここは一人の言葉に理由を持たせる話です。
区別が付かないと言われたならそちら、浮いていると言われたならこちらです。 症状が違います。
一本の原稿に両方を当てられます。
長い台詞を短くする記事は量の話
長い台詞を短くする記事は、出来た台詞を削る側です。
向こうは残す情報を選ぶ話、ここは言い方そのものを決める話です。
目的が決まっていると、削る先も選びやすくなります。 目的に関係しない語から落とせます。
まだ書けていない段階なら、こちらを先に開きます。
同じ人物がどこまで揺れてよいか
場面ごとに言い方が変わるのは正しいことですが、幅は要ります。
関係の側を固定します。 相手ごとの距離は変えません。
語彙は変えないでおきます。 呼び方や使う言葉まで変わると別人になります。
変えてよいのは語順と長さです。 目的と状況で動く部分です。
読み返して別人に見えたら、語彙か関係のどちらかが動いています。 そこを戻します。
目的・関係・情報を読み上げる
| 読み上げて見る | 確認すること |
|---|---|
| 目的 | 言う理由があるか |
| 関係 | 相手で変わるか |
| 情報 | 落ちていないか |
一つの台詞だけ、目的を変えてみる
いま浮いている台詞が一つあるなら、その人物が何のために言うのかを一行で書きます。
書いた目的に合わせて、語順だけ入れ替えます。 情報は減らしません。
一つ動けば、同じ場面の他の台詞も揃います。 別の台詞にも、同じ問いを当てられます。