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エッセイ漫画を選ぶ|暮らし・仕事・経験の読み方

公開日

作者の経験を扱う作品は、どんな題材かと、どこまでが一人の経験として書かれているかで選べます。公式の説明に実話や実体験の表示があるかの確かめ方と、一人の経験を全体の話へ広げないための見方をまとめました。

「エッセイ漫画を選ぶ」を表したイラスト

一人の経験は、一人の経験のまま

作者の経験を描いた漫画を読みたい。そう思って探すと、実話と書かれている作品をまとめて候補にしてしまいます。

でも、選ぶときに見るところは二つあります。何を題材にした作品なのかと、どこまでが一人の経験として書かれているかです。

外側の広い枠の中に一人分の内側の枠を置き、そのあいだの余白に「この作品からは分からない」と示した図
内側が小さいことは、価値が小さいという意味ではありません

エッセイ漫画に書かれているのは、その人が通った道のことです。 そこから外側のことまで分かるわけではありません。その差は、作品の欠点ではなく、もともとの範囲です。

実話の表示・題材の重さを作品の価値の条件にしない

先に、混ざりやすいところを外しておきます。

見たいのは、何の経験が、どこまでの範囲で書かれているかです。

公式の説明でどう書かれているか

まず、作品がどう出されているかを見ます。

実話・実体験・一部創作・再構成・取材・表示なしを同じ大きさの枠で並べた図
並びに順位はありません
表示 どう読むか
実話 作者がそう示している
実体験 作者が通ったこと
一部創作 作られた部分がある
再構成 順序が整えてある
取材 他の人から聞いた話
表示なし 断定しない

公式の説明に書かれていないのに、実話やノンフィクションと決めつけないでください。 表示があるかどうかは、出版社の作品ページや作品の公式ページで確かめられます。

表示のしかたは作品ごとに違います。 どれが正しいという話ではなく、その作品がどう名乗っているかを、そのまま受け取るだけです。

題材から選ぶ

暮らし・仕事・家族・育児・学校・趣味・創作・旅行・人間関係を同じ大きさの枠で並べた図
並びに順位はありません

暮らし、仕事、家族、育児、学校、趣味、創作、旅行、人間関係。どれを読みたいかで、同じ棚の中でも見る場所が変わります。

題材の重さは、作品の価値とは別です。 静かな暮らしの話も、大きな出来事の話も、同じように読む値打ちがあります。今日どちらを読みたいか、というだけの違いです。

外側へ広げない

ここがこの記事の要です。

一人の経験から、全体・業界・社会の話へは広がらないことを三つ並べて示した図
内側の枠は外側を埋めません

作者が「私はこう経験した」と書いているとき、それはその人が通った範囲のことです。

何人分か読めば全体が分かる、ということでもありません。 数を足しても、それは足した人数分の経験のままです。

とくに広げないでおきたいところが三つあります。体と心のこと、仕事と手続きのこと、そして周りの人の気持ちです。 順に見ていきます。

体と心のこと・仕事と手続き・人の気持ちを同じ大きさの枠で並べた図
どれも一人分の経験のまま扱います

いま進んでいることか、振り返って描いたことか

題材と範囲のほかに、もう一つ見ておくと読み方が決まります。経験してから描くまでに、どれくらい間があるかです。 同じ題材でも、この距離が違うと語り口がまるで変わります。

経験との距離 語り口に出るもの
進行中に描く 結論が無い
少し経ってから 整理が進む
何年も後から 答えが付く
混ざる 後から挟まる

いま進んでいることを描く作品では、結論が出ていません。 先がどうなるか作者にも分からないまま続くので、迷いや言い直しがそのまま残ります。 読んでいる側も同じ位置に立てますが、まとまった読後感は得られません。育児や療養の題材でよくある形です。

少し経ってから描く作品では、整理が進んでいます。 どこが山場だったかが分かっているので、構成が付き、省略も効いています。 迷いは描かれますが、迷ったこと自体が振り返られています。

何年も後から描く作品では、答えが付いています。 あのときこう考えていた、いま思えばこうだった。当時の気持ちと、今の見方が二重に載ります。 落ち着いて読める代わりに、その場の生々しさは薄まります。

両方が混ざる作品もあります。 当時描いたものに、後から書き足しが挟まる形です。同じ出来事に二つの距離が並ぶので、変わった部分そのものが読みどころになります。

紹介文からは、ここは案外読めます。 連載中のものが並んでいれば進行中の形です。語の選び方でも見当が付きます。 「あれから」「振り返って」といった言い方や、まとめのときに書き足したと示されていれば後から描いた形です。表示の確認と同じ場所で分かります。

記憶と、形にする作業

経験を漫画にするときには、思い出しながら形にする作業が入ります。

省略、順序の入れ替え、場面のまとめ方、見せ方。作品によっては、そうした調整があると示されています。

ただし、特定の作品がそうしていると決めつけることもしません。 何をどう整えたかは、作者が示していなければ分かりません。分からないことは、分からないままにしておきます。

体や心の経験を、助言に読み替えない

病気、治療、妊娠や出産、心の不調、障害、介護。こうした経験を描いた作品があります。

仕事や手続きの経験を、結論にしない

職場のこと、働き方、契約、人間関係の問題、辞めること、手続き。これらも同じです。

相手の気持ちを断定しない

エッセイ漫画には、作者の周りにいる人が出てきます。 家族、友人、同僚、かつて近かった人。

重い経験を売りにしない

病気、死、虐待、差別、嫌がらせ、被害、事故、災害、罪に関わる出来事、暮らしの苦しさ。こうした経験を描いた作品もあります。

表示の言葉は、そのまま写して控える

控えるときに大事なのは、書いたことの出どころです。

そのうえで、題材と、どこまでが一人分として書かれていたかを残します。

架空例で題材と範囲の見分け方を見る

題材と、書かれている範囲の組み合わせを四通り書きます。実在の作品を指したものではありません。

4つとも、実話かどうかでは分けられません。 何の経験を、どこまでの範囲で書いているかで別の作品になります。

体験別・歴史もの・伝記もの・創作ものの入口との境目

近い棚にある入口との違いを、先に分けておきます。

どの分野を読むか決める話は、ここより手前にあります。 エッセイを読むと決めたあとで、その中の何を読むかを絞るのがこの記事です。

歴史を扱う作品を探す見方とは、確かめ先が違います。 あちらには作品の外に公開された記録がありました。 こちらで扱うのは一人の経験で、外から照らし合わせられるものではありません。 確かめられるのは、作品がどう名乗っているかまでです。

他人の人生を描く作品とも分けます。 誰かの生涯をたどる作品は、この記事の範囲ではありません。 ここで扱うのは、作者自身の経験が元にある作品です。

創作する人が出てくる作品を探す見方とも別です。 登場人物が何かを作っている話と、作者が自分の制作の経験を書いている話は違います。 後者だけがこの記事の対象です。

描き方の記事でもありません。 題材の見つけ方、構成、投稿の仕方、収益の話は扱いません。読む側の探し方だけです。

題材と表示を確かめる前に見る5点

開く前に、さっと確かめておきたいところです。

エッセイ漫画を選ぶ前に確認したい5項目のチェックリスト
全部そろわないことのほうが多いです
見るところ 確認すること
表示 公式にどう書くか
題材 何の経験か
語り手 作者本人か
範囲 一人分と読めるか
一般化 広げていないか

結局、エッセイは「実話かどうか」ではなく「題材と範囲」で選ぶ

やることは結局ひとつです。読みたいのがどんな経験なのかを、先に決めること。

暮らしの積み重ねを読みたいのか、働くところを読みたいのか、誰かとの関わりを読みたいのか。そこが決まっていれば、実話という言葉だけで選ばずに済みます。

そして、書かれているのは一人分です。 そのつもりで読めば、外側へ広げずにその人の話として受け取れます。

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