歴史漫画を選ぶ|時代・人物・創作の範囲を確認
公開日
歴史が出てくることと、歴史を描くことは別です。時代・人物・創作の範囲という三つの確認点と、作品の説明と歴史上の事実を分けて控える書き方、そして出典をどこで確かめるかをまとめました。史実らしさを採点する記事ではありません。
「歴史が出てくる」と「歴史を描く」
歴史の漫画が読みたい。そう思って探すと、昔の時代が舞台の作品をまとめて候補にしてしまいます。
でも、昔が舞台であることと、歴史上の出来事を描いていることは別です。 時代の風景を借りているだけの作品もあれば、実際にあったとされる出来事を軸にしている作品もあります。
そして歴史の作品では、どこまでが題材で、どこからが作品の創作なのかが読みどころの一部になります。 そこを意識して探すと、読んだあとの受け取り方が変わります。
昔の舞台・実在の名前・注釈の有無を題材の条件にしない
先に、混ざりやすいところを外しておきます。
見たいのは、何を題材にして、どこを作っているかです。
確かめるのは三つ
見るところを三つに絞ります。
時代は、いつの話かです。 同じ「昔」でも、世紀が違えば暮らしも仕組みもまるで違います。
人物は、実在とされる人か、作品が作った人かです。 両方が同じ物語に出てくることもよくあります。
創作の範囲は、どこからが作品の作ったところかです。 出来事の順序、会話、心の動き、人物どうしの関係。どこまでが題材で、どこからが物語かは作品ごとに違います。
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 時代 | いつの話か |
| 人物 | 実在か創作か |
| 出来事 | 作品の中の筋か |
| 創作の範囲 | どこまで作ったか |
| 出典 | 公式に書かれているか |
実在とされる人物と、作品の中の人物
同じ名前でも、記録に残る人と、作品の中の人は別のものとして扱います。
作品の中でその人物が語ったこと、考えたこと、誰をどう思っていたか。これらの多くは作品が形にした部分です。 記録に残っているのは、もっと限られた範囲であることがふつうです。
創作はどの層に入るか
「どこまでが題材で、どこからが創作か」は、層に分けると見当が付きます。 創作はどこにでも入るわけではなく、入りやすい層と、そもそも記録が残っていない層があります。
| 層 | 記録に残るか |
|---|---|
| 出来事 | 残ることがある |
| 順序 | 一部残る |
| 会話 | ほぼ残らない |
| 内面 | 残らない |
| 関係 | 断片だけ |
出来事があったかどうかは、記録に残っていることがあります。 だから、ここを大きく変えている作品は、そのこと自体が作品の方向を示します。 起きなかったことを起こす作りなのか、起きたとされることの範囲で進めるのか。確かめられる層です。
順序と因果は、一部しか残りません。 何が先で何が後かは分かっても、どちらがどちらを引き起こしたのかまでは記録が答えないことが多くあります。 つなぎ方は作品の解釈になります。
会話はほぼ残りません。 記録に残る言葉があっても、そのやり取り全体が残ることは稀です。台詞が自然に流れている作品は、それだけ作られているということです。 不自然だという話ではなく、そこが創作の層だという話です。
内面は残りません。 何を思っていたか、誰をどう感じていたか。ここは必ず創作です。 つまり、内面を厚く描く作品は、必ず解釈を前に出しています。考証が細かいと言われる作品でも、内面の層は作られています。
関係は断片だけが残ります。 誰と誰が近かったかの手がかりはあっても、その中身は埋めることになります。 同じ人物が作品によってまるで違う関係の中に置かれるのは、この層の余白が大きいためです。
紹介文からは、どの層に創作が入るかは書かれていません。 ただ、内面や会話が厚い作品は、読めばすぐ分かります。 確かめられるのは出来事の層までで、その先は開いてから見る、という順になります。
史実らしさを採点しない
歴史を扱うと、どれくらい史実に忠実かを言いたくなります。 この記事ではそこを扱いません。
偉人度・功績の大きさ・人物の格付けも作りません。 歴史上の人物を並べて比べる記事ではありません。
作品の説明と、歴史の事実を分けて書く
ここがこの記事の要です。
控えておくときは、欄を分けます。 作品について言えることと、歴史について言えることは、確かめる先が違うからです。
| 書くこと | どこで確かめるか |
|---|---|
| 作品の説明 | 出版社の作品ページ |
| 掲載と巻数 | 正規の配信元 |
| 読んだ範囲 | 自分の記録 |
| 歴史の事実 | 公的機関の資料 |
混ぜて書くと、あとから見たときにどちらの話か分からなくなります。 「こう描かれていた」と「こうだった」は、別の欄に置いておきます。
出典をどこで確かめるか
作品のことは、出版社の作品ページ、作品の公式ページ、正規の配信元で確かめます。 その作品が何を題材にした作品として出されているかは、たいてい公式の説明に書かれています。
歴史のことは、別に確かめます。 公的機関や研究機関が出している資料、博物館や資料館の説明、公開されている一次資料。まとめ記事や百科事典の項目だけを根拠にしないでください。手軽ですが、そこは出発点であって到達点ではありません。
重い主題を軽く扱わない
歴史を題材にすると、戦争、差別、迫害、支配と被支配といった主題に触れる作品が出てきます。
これらは読みどころとして軽く紹介できるものではありません。 「迫力がある」「見どころ」といった言葉で片づけると、実際に起きたことと、それを受けた人たちのことが抜け落ちます。
そうした主題を含む作品を控えるときは、何を扱った作品なのかをそのまま書きます。 印象の言葉に置き換えないほうが、あとで読む自分にも正確に伝わります。
この記事は、個々の出来事について評価や結論を示しません。 それは作品選びの記事の仕事ではありません。
今の物差しだけで測らない
歴史上の人物や社会を、今の価値観だけで単純に評価しないでおきます。
当時の仕組みや考え方は、今とは違う前提の上にありました。だからといって、何をしても仕方がなかったという話にもなりません。 どちらか一方に寄せると、見えなくなるものがあります。
架空例で題材と創作の切れ目を見る
創作がどこから始まるかを変えた例を、四通り書きます。実在の作品を指したものではありません。
4つとも、昔が舞台かどうかでは分けられません。 何を題材にして、どこを作っているかで別の作品になります。
体験別・宇宙もの・SF読み切りの入口との境目
似た手順を使う入口があるので、違いを置いておきます。
読みたい体験から分野を選ぶ見方は、その手前の話です。 あちらは分野そのものを決める段階で、こちらは歴史を扱う作品の中で、題材と創作の切れ目を見ることに集中しています。 総論には戻りません。
宇宙を舞台にした作品を探す見方とは、軸が違います。 あちらは舞台の中で何を読みたいかでしたが、こちらには題材となる記録が外にあります。 作品の外に確かめる先があるかどうかが、いちばんの違いです。
SFの読み切りを探す見方とも別です。 あちらは設定の型と、読んだあとに残る問いから選ぶ話でした。こちらは題材と創作の境目が軸です。
題材と出典を確かめる前に見る5点
開く前に、さっと確かめておきたいところです。
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 時代 | いつの話か |
| 人物 | 実在か創作か |
| 範囲 | どこまで創作か |
| 出典 | 公式で確かめたか |
| 分離 | 説明と事実を分けたか |
結局、歴史ものは「昔が舞台か」ではなく「創作がどこに入るか」で選ぶ
歴史漫画を探すときにやることは、結局ひとつです。何を題材にした作品なのかを、公式の説明で確かめること。
そのうえで、作品について言えることと、歴史について言えることを別の欄に置いておく。 確かめていない欄は、空のままで構いません。空欄は作品の欠点ではなく、こちらがまだ確かめていないというだけです。
創作が入っていることは、作品の傷ではありません。どこを作ったのかが分かっていれば、作られた部分もふくめて読めます。