COMISTA JOURNAL漫画を描く

漫画に緊張感を作る|情報・間・距離を調整する

公開日

張りつめた場面は、出来事を強くしなくても作れます。同じ一つの穏やかな場面について、情報を出す量・コマの間・人物の距離という三つを別々に動かし、テンポの差がどう出るかを見ていきます。怖い出来事を足す話ではありません。

「漫画に緊張感を作る」を表したイラスト

張りつめた場面にならない

大事な場面を描いたのに、読み返すと平らに感じることがあります。

出来事を強くすれば張りは出ますが、話の側が動いてしまいます。 戻せなくなります。

そこで、出来事はそのままで三つのつまみを回します。 場面の構造のほうを変えます。

情報・間・距離の三つのつまみ

つまみ 回すと変わること
情報 読み手の予想
間 次までの待ち
距離 二人の緊張

情報は、読み手に何を知らせておくかです。 知らせるほど先が読め、伏せるほど身構えます。

間は、次のコマまでの空きです。 空けると待たされ、詰めると流れます。

距離は、画面の中の人物どうしの離れ方です。 近いほど逃げ場が減ります。

同じ場面を二つのテンポで

同じ一つの場面のコマ列を、情報量と間と距離を変えた二本のテンポで並べた図
コマの中身は二本とも同じです

二本のコマ列は、張りの差だけを見せるために組んだ架空の場面です。 危ないことは何も起きません。

二本のコマは同一の中身です。 借りた本を返しに来た、というだけの場面です。

上の列は情報を先に出し、間を詰め、二人を離しています。 落ち着いて読めます。

下の列は情報を伏せ、間を空け、二人を近づけています。 同じ出来事でも身構えます。

三つは同時に動かさない

情報量・間・距離の三つについて、ゆるい側と張る側の値を並べた図
三つは別々のつまみです

三つを一度に回すと、効いたつまみが特定できません。

一つずつ回して読み返すと、その場面で効くつまみが見えます。 一つ回すだけで届く場面が大半です。

三つとも張る側へ回すと、読み手が休めません。 場面が続くと効きが落ちます。

戻すときも一つずつです。

強い出来事を足す話ではない

手元に残すのは、出来事を変えずに三つを動かすことと、一度に一つだけ回すことの二つです。

情報のつまみを回す形

三つのうち、情報がいちばん分かりにくいつまみです。 回し方を分けておきます。

読み手だけが知っている。 人物が気づいていないことを先に見せる形です。待つ側になります。

人物だけが知っている。 読み手が置いていかれる形です。身構えます。

どちらも知らない。 同時に分かる形です。驚きは大きく、張りは短くなります。

知っている側 読み手の状態
読み手だけ 待つ
人物だけ 身構える
どちらも無い 驚く

伏せるか出すかの二択ではありません。 誰が知っているかで決まります。

ゆるい場面を残しておく

張っていない場面があるから、張った場面が効きます。

全部を張ると、読み手は差を感じなくなります。 平らになるのと同じです。

ゆるい場面では三つとも戻します。 情報を出し、間を詰め、距離を取ります。

どの場面をゆるくするかは話で決まります。

場面の種類でつまみを選ぶ

どのつまみが効くかは、場面の形で変わります。

二人が向き合う場面。 距離が効きます。回しても話の筋が動きません。

待っている場面。 間が効きます。何も起きない時間そのものが中身になります。

何かを知る場面。 情報が効きます。誰が先に知るかで組み直せます。

当てはまらない場面もあります。 その場合は一つずつ試します。

一つ回して変わらなければ、別のつまみへ移します。 同じつまみを強く回しません。

張り続けると効かなくなる

同じつまみを回し続けると、読み手が慣れます。

慣れたあとは、もっと強く回すしかなくなります。 上限にぶつかります。

別のつまみへ移すと、同じ強さでも新しく感じます。 三つある理由です。

戻してから回し直す手もあります。

ギャグの間の記事は落差の話

予想と反応を配置する記事は、間の使い方が近い位置にあります。

あちらが作るのは落差、ここで作るのは持続です。

同じ間でも、落とすか張るかで置き方が変わります。 目的が違います。

笑わせる場面なら、そちらの手順が合います。

コマの寸法を決める記事との差

コマの寸法を決める記事が動かすのは、枠の大きさそのものです。

向こうが扱うのは一枚の大きさで、ここで扱うのは並べ方と中身の量です。

寸法を変えずに張りを作れるのが、この三つのつまみです。 紙幅は動かしません。

枠から組み直すときは、そちらを開きます。

三つで届かないとき

三つを回しても平らなままの場面があります。

前の場面を見ます。 直前が張っていると、差が出ません。

出来事の位置を見ます。 場面の頭に置くと、残りが説明になります。

読み手が何を知りたいかを書き出します。 知りたいことが無ければ、待つ理由もありません。

それでも届かなければ、その場面は張らせない選択もあります。 全部を張る必要はありません。

情報・間・距離を戻す

戻すところ 確認すること
情報 出しすぎたか
間 空けすぎたか
距離 詰めたままか

一場面だけ、一つのつまみを回す

いま平らに感じる場面が一つあるなら、三つのうち一つだけ選びます。

情報を一つ伏せるか、間を一つ空けるか、距離を一段詰めます。 残りは触りません。

読み返して変わらなければ、別のつまみへ移します。 出来事は最後まで動かさずに済みます。

この記事の内容に誤りを見つけた場合は お問い合わせ からお知らせください。編集方針は こちら にまとめています。