創作する人を描く漫画を探す|完成までの物語
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創作する人が出てくる漫画は、うまくいくまでの話とは限りません。何を作っているか、ひとりで作るか誰かと作るか、何に向き合っているかという三つから、作っているあいだの時間を読める作品を選ぶ方法をまとめました。結末には触れません。
読みたいのは、成功譚ではなく作っている時間
創作する人が出てくる漫画を探すと、うまくいくまでの話が先に出てきます。
賞を取る、連載が決まる、売れる。そういう筋の作品もありますが、ここで見たいのはその手前です。 何かを作っている人が、作り終えるまでのあいだに何をしているか。読んでいて時間を使うのは、たいていそこです。
何を作っている話かで大きく変わる
まず、作っているものを見ます。
| 創作分野 | 読むところ |
|---|---|
| 漫画 | 何を仕上げるか |
| 文芸 | どこで迷うか |
| 音楽 | ひとりか共作か |
| 映像 | 誰と進めるか |
| ゲーム | 役割の分かれ方 |
ゲーム、写真、舞台、工芸。ここに並べたものが全部ではありません。 分野は入口であって、分類の表ではありません。
作るものが違うと、作る場面の形も変わります。 机に向かう時間が長い話と、人が集まる時間が長い話では、読んでいる手ざわりが違います。
ひとりで作るか、誰かと作るか
分野と同じくらい効いてくるところです。
ひとりで決めてひとりで直す話と、何人かで意見を合わせながら進める話では、読んでいるあいだに起きることが違います。 前者では迷いが内側に向き、後者では話し合いの場面が増えます。
どちらが本格的ということはありません。 人数が多いほど大きな仕事、という読み方もしません。
紹介文からでも、主人公がひとりで作っているかどうかはある程度分かります。そこが分かるだけで候補は絞れます。
葛藤は向き合う相手で分かれる
ここがこの記事の中心です。
| 葛藤 | 確かめること |
|---|---|
| 直す | 何を直すのか |
| 期限 | 時間との折り合い |
| 評価 | 反応との距離 |
| 協働 | 意見の合わせ方 |
| 自分 | 続けるか迷うか |
同じ「うまく進まない」でも、向き合っている相手が違えば別の読み物になります。 思いついたものが形にならない話、直しても直しても終わらない話、受け取る人の反応と向き合う話、期限と折り合いをつける話。
作ることと暮らしの時間をどう配るか、このまま続けるかどうかも、向き合う相手のひとつです。
数が多いほど読み応えがある、ということはありません。 ひとつだけを扱う作品もありますし、いくつも混ざる作品もあります。
受け取る人が、どこにいるか
葛藤のひとつに「評価」を挙げましたが、受け取る人がどこにいるかで、その葛藤の形が変わります。 分野や人数とは別の軸なので、ここも見ておくと絞りやすくなります。
| 受け取る人 | 出てくる場面 |
|---|---|
| 目の前の一人 | 渡す瞬間 |
| 決まった相手 | 注文と修正 |
| 顔の見えない側 | 届いた後の反応 |
| 誰にも見せない | 作る時間だけ |
目の前の一人に渡す作品では、反応がその場で返ります。 手渡して、表情を見る。評価が数でも言葉でもなく、一人の反応として来るので、場面が短くて済みます。 受け取る人との関係のほうが読みどころになります。
決まった相手から頼まれて作る作品では、注文と直しが繰り返されます。 相手の意図を読む、食い違いを埋める。作りたいものと求められたものの差が葛藤になるので、話し合いの場面が増えます。 仕事として描かれる作品に多い形です。
顔の見えない側へ出す作品では、反応が遅れて届きます。 数字、感想、沈黙。誰が言ったのか分からないまま受け取ることになるので、届いたあとの時間が長く描かれます。 出すこと自体の怖さが主題になることもあります。
誰にも見せない作品もあります。 完成しても出さない、あるいは出す予定が無い。受け取る人がいないので、評価の葛藤が丸ごと消えます。 残るのは作っている時間そのもので、いちばん静かな形になります。
紹介文からは、ここは比べやすいところです。 依頼や担当の相手が出ていれば決まった相手の形、発表や投稿の語があれば顔の見えない側、どちらも出てこなければ手元で作る形です。 葛藤の種類より先に見当が付きます。
苦しさを創作の値打ちにしない
ここは先に外しておきます。
過労、失敗、断られること、お金の不安、体調。こうした場面が描かれる作品もあります。 ただ、壮絶、リアルで面白い、苦しいほど見応えがあるとは書きません。何を扱った作品かをそのまま書けば足ります。
苦手な題材があるなら、葛藤の種類より先にそこを確かめるほうが確実です。
描かれた行動と、読む側の言葉を分ける
混ざりやすいので分けておきます。
作品に出てくるのは、直している、迷っている、言い合っているといった行動です。そこから完璧主義、自信がない、頑固と言い換えるのは、読む側があとから足した言葉です。
選ぶために要るのは、どんな場面が描かれているかまでです。
作中の現場を、仕事の一般論に広げない
創作を扱う作品には、仕事としての場面も出てきます。
近い入口と混ざらないように
似た探し方があるので、分けておきます。
作者自身が自分の経験を描いた作品とは別です。 登場人物が何かを作っている話と、描いた人が自分の道のりを書いている話は、確かめ先が違います。 前者だけがここの対象で、作品がフィクションなら、実際にあった話としては扱いません。
絵や美術の制作を軸に探す見方は、分野をひとつに絞った側です。 こちらは分野をまたいで、作っているあいだの向き合い方を見ています。
商業連載以外の作品へたどり着く方法とも分かれます。 あちらはどこで読めるかの経路の話で、こちらは作品の中に誰がいるかの話です。新しい作家を探すこと、投稿の場を見て回ること、作り手をたどっていくこと。どれもこの記事の範囲ではありません。
結末の手前で止める
紹介するときに線を引くところです。
分けておきたいのは三つあります。作る過程、仕事として続けること、そして成果です。この記事が扱うのは一つ目だけで、受賞やデビュー、売上の話はしません。
架空の4例で、作るものと葛藤を並べる
分野と向き合う相手の組み合わせを、四つ置きます。どれも実在の作品ではありません。
4つとも、うまくいったかどうかでは並べ替えられません。 作るものと向き合う相手が違うだけです。
この4つは、実在する作品の代わりにはなりません。 実際に読んだ作品を挙げるには、どこで読めるかと、どこまで読んだかが要ります。
紹介文でどこまで分かるか
開く前に確かめられるところは限られています。
| 開く前に | どう見るか |
|---|---|
| 分野 | 何を作る話か |
| 人数 | ひとりか複数か |
| 葛藤 | 何に向き合うか |
| 語り | 作中の人物か |
| 題材 | 苦手な題材か |
公式の説明に書かれているのは、たいてい何を作っている人物が出てくるかまでです。どの葛藤が中心かまでは分からないことが多いので、試し読みがあればそこを見ます。
結局、創作ものは「うまくいくか」ではなく「向き合う相手」で選ぶ
創作する人を描く漫画を探すときにやることは、結局ひとつです。何を作っている人の、どのあたりを読みたいのかを先に決めること。
ひとりで机に向かう時間なのか、誰かと意見を合わせる時間なのか、受け取る人の反応と向き合う時間なのか。決めてから紹介文を開くと、どこを見ればよいかが分かります。
「創作もの」とひとことで言っても、作っているものも向き合う相手も作品ごとに違います。作り終えたかどうかは、読んでから分かることです。