スポーツ漫画の楽しみ方|試合以外にもある物語
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追える筋は三つあります。競技の筋、人の筋、関係の筋。三本は作品の長さぶん並んで走っていて、試合はそれが交わる一区間です。試合の外にも筋は続いているので、勝ち負けだけを追うと読むところが減ります。強さを並べることも、競技のやり方を教えることもしません。
勝ち負けだけを追うと、読むところが減る
スポーツを描く作品を開くと、まず結果のほうへ目が行きます。 勝ったのか、負けたのか。
それ自体は自然な読み方です。ただ、結果だけを追っていると、読むところがずいぶん減ります。
減るのは、試合の場面が短いからではありません。試合の外にも、追える筋が走り続けているからです。
追える筋は三つある
| 筋 | 追うもの |
|---|---|
| 競技 | 決まりと体の慣れ |
| 人 | その人が抱えているもの |
| 関係 | 誰との間が変わるか |
三本は同時に走っています。 どれか一本を選ぶ必要はありませんし、途中で乗り換えても構いません。
三本に順番も上下もありません。 図の線を同じ太さで引いてあるのは、そこを崩さないためです。
競技の筋
決まりがあり、その決まりの中で体が動きます。
何ができて何ができないのか、道具や場がどう関わるのか、繰り返した動きがどう変わっていくのか。この筋は、体のほうに現れます。
決まりを全部知らなくても読めます。 作品の中で必要な分は、たいてい作中で示されます。
知っていると別の楽しみ方が増える、という関係です。 知らないと読めない、ではありません。
人の筋
その人が何を抱えたまま続けているか。
始めた理由、途中で変わった理由、やめようとした時期、誰にも言っていないこと。競技の場面が無いページにも、この筋は出ています。
抱えているものが立派である必要はありません。 軽い理由で始めて、そのまま続いている人も描かれます。
言葉で説明されないことも多くあります。 間の取り方や、何をしなかったかのほうに出ます。
関係の筋
誰との間が、どう変わっていくか。
同じ側にいる人、向かい合う人、見ている人、教える人、離れていった人。関係は試合の外で動くことが多いところです。
近づくことだけを変化と呼ぶわけではありません。 距離が開くことも、口をきかなくなることも、同じだけ変化です。
この筋は、いちばん静かなページに出ていることがあります。 移動中や、待っているあいだの数コマです。
試合は、三本が交わる一区間
試合の場面では、三本が同時に見えます。 だから強く印象に残ります。
けれど、その前後にも三本は続いています。 支度、移動、待つ時間、話す時間、見ている人、続けるかどうか。
試合を軽く見る、という話ではありません。 交わるところが一区間にあって、外にも道が伸びている、というだけです。
外を読むと、試合の場面の見え方も変わります。 そこまでに何があったかが、同じ一コマに乗ってきます。
作品ごとに、太い筋が違う
三本に上下はありませんが、作品ごとにどれかが太くなっています。 どれが太いかが分かると、その作品に何を期待して読めばよいかが決まります。
| 太い筋 | 紙面に出る形 |
|---|---|
| 競技 | 試合が長い |
| 人 | 試合の外が長い |
| 関係 | 会話が多い |
| 三本が均等 | 話数が多い |
競技の筋が太い作品では、試合そのものに紙面が割かれます。 一試合に何話も使い、一つの場面を細かく分解して見せます。 決まりの説明も丁寧に入ることが多いところです。体の動きや駆け引きを読みたい日に向いています。
人の筋が太い作品では、試合の外が長くなります。 競技の場面は短く、始めた理由や続ける理由のほうに時間が使われます。 試合を期待して開くと物足りなく感じますが、そこが読みどころの作りです。
関係の筋が太い作品では、会話の場面が増えます。 移動中、待っている時間、練習の合間。誰と誰がどう変わるかに紙面が向きます。 競技が舞台として置かれているだけ、という読み方もできます。
三本が均等な作品もあります。 そのかわり、一本ずつを深く描くには話数が要ります。 長く続いている作品にこの形が多いところです。
太い筋は、途中で入れ替わることがあります。 序盤は競技の筋が太く、後半は関係の筋が太くなる。合わなくなったと感じたら、太い筋が移ったのかもしれません。
紹介文からは、太さまでは書かれていないことが多いところです。 ただ、一試合に何話使っているかは、目次や話数の刻み方で見当が付きます。 一つの試合に話数が集まっていれば競技の筋が太い形です。
強さ比べ・競技知識・試合の量を読む条件にしない
追いたいのは、三本のうち、いま自分がどれを見ているかです。
勝ったことだけが、変わった印ではない
結果が出たところにだけ印が付く、という作りにはなっていません。
できなかったことができた場面、言えなかったことを言えた場面、続けると決め直した場面。印は途中にも置かれています。
負けた回に印が付くこともあります。 そこで何かが変わったのなら、結果とは別に読めます。
印の数を数えることはしません。 多いほど良い作品、という測り方になってしまいます。
強さを並べることはしない
この記事では、作品の中の人を強い順に並べません。
勝った回数、才能の量、努力の量、能力の高さ。どれも作品の外から数えられるものではありませんし、数えたところで読むことの助けになりません。
作品どうしを強さで比べることもしません。 競技が違えば比べる土台がありませんし、同じ競技でも作りが違います。
上と下を作らずに読めます。 そのほうが、三本の筋を追いやすくなります。
競技のやり方は教えない
ここで扱うのは読み方だけで、競技のやり方には立ち入りません。
体の使い方、練習の組み立て、痛めたときの対処、食べ方、試合の運び方、決まりの細かい解釈。どれもここでは扱いませんし、作品から学ぶものとしても扱いません。
作中の場面は、物語として置かれています。 手元でそのまま試すことを前提にした描写ではありません。
実際にやるつもりなら、その競技の確かな案内のほうを見ます。 漫画の記事が代わりになるところではありません。
隣に並ぶ記事との分かれ目
同じ棚に届きそうな記事がいくつかあるので、線を引いておきます。
対決を読む記事とは、扱うものが違います。 あちらが見るのは向かい合う二つの目的と、そのあいだに置かれるものです。 ここで見るのは決まりのある場で、三本の筋がどう走るかです。 競技と戦いを同じものとして扱いません。
短い一作を、切り取られた場面から選ぶ記事も別に立っています。 そちらは選ぶための記事で、 ここは読むための記事です。
特定の競技を扱う記事とも分かれます。 泳ぐ、蹴る、踊る、組み合う。それぞれの分野ごとに、別の記事が受け持っています。
名前の切り方を七つに分けて見渡す記事も、これとは別の場所にあります。
読むときに見るところ
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 筋 | 三つのどれか言えるか |
| 外 | 試合の外も見たか |
| 勝敗 | 変化の印にしてないか |
| 順位 | 強さを並べてないか |
| 実用 | 手引きに使ってないか |
結果より、三本のどれを追っているか
いま読んでいる作品で、試合の場面が無いページを一つ選びます。
そこで動いているのが、体のほうか、抱えているもののほうか、誰かとの間のほうか。一つ選んで、そのページだけ追ってみます。
次に試合の場面へ戻ったとき、同じ絵が少し違って見えます。 結果を知る前に、読むところが一つ増えています。