転生と転移の違い|漫画の導入設定を整理
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二つの言葉に、どこでも通じる決まった定義はありません。決まっているのは作品ごとです。移る前を基準にして、体・記憶・名前・立場・できること・周りの扱いの六つが移ったあとにどうなるかを見ると、導入の数ページで設定が読み取れます。優劣は付けません。
言葉のほうは、決まりきっていない
転生と転移。この二つを、どこでも通じる定義で分けようとすると詰まります。
片方を「死んで別の人になること」、もう片方を「体ごと別の世界へ行くこと」と説明されることはあります。ただ、その通りに使われていない作品もいくらでもあります。
決まっているのは、言葉のほうではなく作品のほうです。 同じ言葉でも、作中でどう扱われているかは一作ごとに違います。
移る前を基準にして、移ったあとを見る
| 軸 | 移ったあとに見ること |
|---|---|
| 体 | 同じ体のままか |
| 記憶 | 覚えているか |
| 名前 | 名前が通じるか |
| 立場 | 立場が残るか |
| できること | 同じことができるか |
| 周りの扱い | 誰として扱われるか |
呼び名から入ると詰まりますが、この六つから入ると詰まりません。 導入の数ページで、たいてい全部わかります。
六つに順番はありません。 上に書いたものが重要、ということもありません。
体・記憶・名前
体が同じかどうかは、いちばん分かりやすいところです。 鏡や水面を見る場面が置かれていれば、そこで示されます。
記憶は、体と別に動きます。 体が変わっても前のことを覚えている作りもあれば、体はそのままで記憶のほうが欠けている作りもあります。
名前は、通じるかどうかで見ます。 前の名前を名乗れる作品もあれば、名乗っても誰にも届かない作品もあります。
この三つは、揃って動くとは限りません。 一つが変わったから他も変わる、という関係ではありません。
立場・できること・周りの扱い
立場は、もとの暮らしがどれだけ残るかです。 仕事や家や身分が続いているのか、まっさらから始まるのか。
できることは、前の手が使えるかどうかです。 覚えた技術や知識がそのまま通用する作品もあれば、何も通らない作品もあります。
周りの扱いは、他の人が誰として見ているかです。 本人の感覚と、周りの扱いがずれているところから話が動くこともあります。
この三つは、導入で言葉にされないことが多いところです。 場面のほうから読み取ります。
持ち越され方は、作品ごとに違う
ここがこの記事の芯です。
同じ六つの軸でも、埋まり方は作品ごとにまったく違います。 図の二例は、この記事のためにこしらえたもので、実在の作品ではありません。
二つに呼び名を付けていないのは、付けられないからです。 どちらを転生と呼び、どちらを転移と呼ぶかは、出している側と読む側で分かれます。
呼び名が先にあって設定が決まるのではありません。 設定が先にあって、そこへ後から呼び名が乗ります。
一つの定義・死ぬ場面の有無で二語を分けない
見たいのは、六つのうち何が持ち越されたか、そこだけです。
何が持ち越されたかで、話の動き方が決まる
六つの軸は設定を読むための道具ですが、読み取ったあとに何が分かるのかも置いておきます。 何が持ち越されたかで、そのあと動きやすい筋が変わります。
| 持ち越されたもの | 動きやすい筋 |
|---|---|
| 記憶だけ | 知識で先を行く |
| 立場も残る | しがらみが残る |
| できることも | 早くから動ける |
| 何も残らない | 一から覚える |
記憶だけが持ち越された作りでは、知っていることが手札になります。 体も立場も新しいのに、前の世界で覚えたことだけが残っている。周りが知らないことを一人だけ知っている状態から始まるので、そこを使う筋が作りやすくなります。 商いや工夫の話が乗りやすいのはこの形です。
立場まで残る作りでは、前の関係がそのまま続きます。 家や仕事や約束が残っているので、自由に動けない代わりに、はじめから引き受けているものがあります。 しがらみのほうが筋を動かします。
できることまで持ち越される作りでは、早い段階から動けます。 手が使える、力が通る。立ち上がりが速いぶん、何を目指すかを早く決める必要が出てきます。 目的のほうに紙面が向きます。
何も残らない作りでは、一から覚えることになります。 言葉も、暮らし方も、誰が誰かも。進みは遅いぶん、世界のほうを丁寧に見せられます。 読む側も同じ速さで覚えていけます。
周りの扱いがずれている作りでは、それだけで筋が一本立ちます。 本人は前の自分のつもりなのに、周りは別の誰かとして扱う。この食い違いが解けるかどうかが、そのまま話になります。
組み合わせによっては動きにくい形もあります。 何も持ち越されず、立場も無く、周りの扱いもずれていない。そのときは世界のほうを見せる作りになりやすく、人物の側の筋は後から立ちます。
死ぬ場面を、条件にしない
始まりに死ぬ場面があるかどうかは、読み分けの条件になりません。
死ぬ場面が描かれていても、体も名前も立場もそのまま続く作品があります。逆に、死ぬ場面が一度も描かれずに、まったく別の人として始まる作品もあります。
描かれていないことを、無かったことにもしません。 あとの場面で明かされることもあります。
そこで決めずに、六つのほうを見ます。 そのほうが早く片が付きます。
どちらかを上に置かない
二語のあいだに序列を置くことは、この記事ではしません。
設定の細かさ、入り方の凝り方、分かりやすさ。どれも、呼び名のほうに付いている性質ではありません。 作品ごとの作り方です。
厚く作ってあることは、そのまま出来の良さにはつながりません。 説明をほとんど置かずに進む作りにも、それを選んだ理由があります。
並べ替えずに読めます。 順位付けを省いたぶん、六つのほうに目が向きます。
現実の考え方を持ち込まない
この記事では、現実の信仰や死後についての考え方を、作品用語の根拠にしません。
似た語が使われていることはあります。ただ、作中の言葉は作中の決まりであって、現実のどの考え方の説明にもなりません。
逆向きも同じです。 作品の設定から、現実のことを説明することもしません。
作中の決まりは、その作品の中だけで通ります。 そこを越えて広げないでおきます。
呼び名が付いていない入り方
どちらの言葉も使われていない作品があります。
気がついたら別の場所にいた、という始まり方だけが置かれていて、説明が一切無い。それでも、六つの軸は読み取れます。
言葉が無いことを、設定が無いことにはしません。 書かれていないだけで、作中の決まりはたいてい一貫しています。
名前を付けずに読み進めても、困ることはありません。
どこまでをこの記事が見るか
取り違えやすい記事があるため、どこまでを見るかを先に決めておきます。
時間を行き来する設定の記事は、別のところを見ています。 あちらが並べるのは時間のほうの決まりで、 ここで見るのは移った人の側の六つです。
世界そのものがどれだけ現実から離れているかを扱う記事とも分かれます。 そちらの中心にあるのは舞台そのものの遠さです。
その世界で何を読むかから作品を選ぶ記事も、別に置かれています。 あちらで先に決めるのは読みたい中身のほうです。
そもそも呼び名がどう分かれているのかは、この記事より一段広い場所で扱われています。
導入の数ページで見るところ
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 軸 | どれが変わったか |
| 用語 | 作中の言い方を見たか |
| 死 | 条件にしてないか |
| 優劣 | 上下を付けてないか |
| 外の話 | 現実を混ぜてないか |
呼び名より、六つのうち何が持ち越されたか
いま気になっている作品で、移ったあとの最初の数ページを見ます。
鏡を見る場面、名乗る場面、誰かに呼ばれる場面。そのどれかに、六つのうちいくつかが出ています。
二つか三つ埋まれば十分です。 残りは読み進めるうちに埋まりますし、埋まらないまま終わることもあります。