漫画の世界観を作る|物語に必要な設定を選ぶ
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設定資料を厚くするのではなく、いまの話に効く規則だけを広げて、残りは束のまま取っておく作り方を見ていきます。束にした設定はいつでも広げ直せますし、枚数の多さが深さになるわけでもありません。
資料が厚くなっても、世界は立ち上がらない
年表も地図も人物の一覧もそろえたのに、話のほうが一歩も進まないことがあります。
書いた量が足りないのではありません。いまの場面に効く規則が、まだ選ばれていないだけです。
規則は、場面に効いて初めて要る
ここでいう規則は、世界の説明文ではありません。
その場面で誰が何をできるか、できないかを決めるもののことです。
効く場面が書けない規則は、いま広げなくて構いません。 束に戻しておけます。
広げた札と束の札を同じ大きさで描いているのは、そのためです。 良い札と悪い札に分けていません。
雨の日・物で払う・外へ出ない
| 規則 | 効く場面 |
|---|---|
| 雨の日だけ開く | 客が来る日 |
| 代金は物で払う | 持ち物を出す |
| 店主は外へ出ない | 外で会えない |
三つとも、どの場面に効くかが右に書けています。 これが広げる理由になります。
店ができた年や町の人口は、いまの三つの場面に効きません。 だから束のままにしてあります。
束は捨てるためのものではない
あとの場面で要るようになったら、そこで広げます。 先に全部を広げておく必要はありません。
束に戻すこともできます。 広げてみて場面が付かなければ、また重ねておけます。
束の札にも名前を残しているのは、そのためです。 伏せてしまうと、何をしまったか分からなくなります。
規則が答えること
| 種類 | 何に答えるか |
|---|---|
| 時 | いつ開くか |
| 物 | 何で払うか |
| 人 | 誰が動けるか |
| 場所 | どこまで行けるか |
四つそろえる必要はありません。 一つだけで最後まで書けることもあります。
四つのあいだに上下も付けていません。 時の規則が場所の規則より上ということはありません。
規則をどう書くか
規則を一行で書くとき、形を決めておくと場面に効きます。
「できる」の形で書きます。 誰が何をできるかが決まります。
「できない」の形で書きます。 そこで人物が止まるので、場面が作れます。
「したら何が起きる」の形で書きます。 代償が決まります。
| 書く形 | 場面での効き方 |
|---|---|
| できる | 手が増える |
| できない | 止まる場面ができる |
| したら起きる | 選ぶ場面ができる |
説明の文にしません。 「この町は古くから栄えた」では、誰も止まりません。
そろえなくても始められる
世界の端まで決めてから描き始める人ばかりではありません。 途中で決まるほうが多いくらいです。
描きながら出てきた規則を足しても構いません。 あとから足したものが軸になることもあります。
先に決めた規則を書き換えても構いません。 場面に合わなくなったら、そちらを直します。
規則どうしが噛み合わないとき
広げた札が二枚以上あると、食い違うことがあります。
両方が効く場面を一つ書いてみます。 書けるなら、食い違っていません。
書けないなら、どちらかを束へ戻します。 両方を残して辻褄を合わせると、説明が要ります。
条件を足して両立させる手もあります。 ただし、足した条件も規則の一つになります。
食い違いに気づいたのが後からでも構いません。 そこで戻せます。
戻した札は消しません。 別の話で使えます。
決めていない余白を残す
すべてに答えを用意しておかなくて構いません。 答えのない部分があっても話は成り立ちます。
決めていないことを、決めていないまま置いておけます。 空欄に印も付けていません。
あとで必要になったとき、そこで決められます。 先取りして埋めても使われないことがあります。
読む人にどれだけ見せるかは別の話
ここで決めたのは、世界の側の規則だけです。 作り手が手元に持っておく分です。
それをどれだけ本文へ出すかは、別に考えることになります。 見せ方の調整は、この記事では扱いません。
手元に規則があることと、それを読者へ説明することは、同じではありません。 出さないまま効かせる規則もあります。
規則を破る場面を作る
決めた規則は、守られる場面だけでなく破られる場面でも効きます。
破ったときに何が起きるかを決めておきます。 決めていないと、破っても何も起きません。
破る人物を一人置きます。 その人物が動く理由にもなります。
破れない規則にもできます。 物理的に不可能な形です。その場合、迂回する手が場面になります。
規則を破る場面は、一本に一つか二つで足ります。 何度も破られると、規則が効いていないように読まれます。
広げるか迷ったとき
判断に困ったときのために、四つの迷い方を並べました。 どれも架空の話で、実在の作品から取ってきたものではありません。
四つとも、設定を足す方向へは寄せていません。 広げるか束へ戻すかを決めているだけです。
効き先・広げる数・戻し方を見る
| 見ること | どう見るか |
|---|---|
| 効き先 | 場面にあるか |
| 書き出し | 場面を書いたか |
| 広げる数 | いま要るぶん |
| 戻し方 | 束に戻せるか |
| 量 | 深さと混ぜない |
埋まらない行があっても進みます。 効く場面が一つ書けていれば、もう動かせます。
一枚だけ広げてみる
世界観づくりに、分厚い資料は要りません。端まで決めるのではなく、いまの場面に効く規則を一枚選ぶこと。
誰が、いつ、どこまで動けるのか。それが場面に効いていれば、世界はもう働きはじめています。
束は束のままで構いません。 広げ直せる形で置いておけば、必要になったときに取り出せます。