漫画の余白を楽しむ|間と時間の感じ方
公開日
コマとコマのあいだの空きは、ただの隙間ではありません。同じ並びのコマを上下に二度置き、あいだの空きだけを変えて見比べます。ただし広ければ時間が長い、狭ければ速い、という対応にはなりません。空きに何が入るかは読む側が決めています。
コマとコマのあいだにも、読むところがある
ページを見るとき、目が行くのはコマの中です。 絵と言葉がそこにあるからです。
けれど、コマとコマのあいだにも空きがあります。 何も描かれていないので見落としやすいのですが、読むときの感じはここでもずいぶん変わります。
同じ絵でも、あいだの空きが違えば続き方が違って見えます。 まずはそこを見比べてみます。
同じ並びで、あいだの空きだけ変えてみる
図の上下は、コマの数も大きさも並びも同じにしてあります。
違うのはあいだの空きだけです。 それでも、上と下では続き方の感じが変わります。
上と下のどちらかを標準として立てることもしません。 順番も付けていません。
自分がどこで差を感じたかを、言葉にしてみると十分です。
空きそのものには、何も描かれていない
あいだの空きは、絵として何かが置かれている場所ではありません。
前のコマと次のコマのあいだで何が起きたのかは、どこにも描かれていません。 それでも、読むと自然につながります。
つないでいるのは読む側です。 描かれていない部分を、こちらが埋めながら進んでいます。
途中で話が飛んだように感じる場合もあります。 そのときは、前後のコマをもう一度見ると、たいてい手がかりがあります。
狭い・広い・ばらつく空き
| 空き | 読まれ方の例 |
|---|---|
| 狭い | 続き・畳みかけ |
| 広い | ため・飛び・区切り |
| ばらつく | 場面が変わった |
上に挙げたものは、いずれも一例にすぎません。 空きの広さから意味が決まる仕組みにはなっていません。
広い空きが「ため」に見えることもあれば、「飛んだ」に見えることもあります。 同じ広さでも、前後の絵が変われば受け取りが変わります。
狭い空きも同じです。 畳みかけているようにも、ただ並んでいるだけにも読めます。
空きの広さで決めつけないこと
目を向けたいのは、そのページで空きがどう置かれているかです。
広い=長い、とは限らない
空きの広さと、作中で流れた時間は、別々に決まっています。
広く空いていても、次のコマが一秒後ということがあります。狭く詰まっていても、何年か経っていることがあります。
時間の長さは、たいてい言葉や絵のほうに書かれています。 季節が変わっている、背が伸びている、そういう手がかりのほうが確かです。
空きは、時間を測る目盛りではありません。 読む調子のほうに関わります。
ページの縁の空きは、また別
紙面のいちばん外側にも空きがあります。
こちらはコマとコマのあいだとは別の話です。 絵が縁まで届いているページと、内側に収まっているページでは、見え方が変わります。
縁まで届いていることを、特別なことだと読まなくて構いません。 そういうページがある、というだけです。
まずはコマとコマのあいだのほうから見ると、分かりやすいはずです。
縦の空きと横の空き
あいだの空きは、縦と横で見え方が違います。
横に並んだコマのあいだ。 次のコマへ目が移る距離です。狭いと続けて読みます。
段と段のあいだ。 行が変わるところです。ここが広いと、一度切れます。
段の空きだけ広いページがあります。 横は詰まったまま、縦だけ空いている形です。
| 空きの場所 | 効いてくるところ |
|---|---|
| 横 | 次のコマへの移り |
| 縦 | 段の切り替わり |
両方そろっているページもあります。 そろっていること自体は珍しくありません。
読む速さは自分で決めている
読む速さの主導権は、空きの側にはありません。
同じページでも、急いで読めば速く、じっくり見れば遅くなります。 そこは読む側にあります。
急いで通したことを、雑な読み方とは呼びません。 何度か読み返すうちに、空きのほうに目が行く回が来ます。
そのときに見比べれば十分です。
空きが無いとき
コマとコマが接している並びもあります。
線一本で区切られている形。 空きがほとんどありません。続けて読みます。
枠が無く、絵が隣り合っている形。 どこで切れるかが分かりにくくなります。
紙の端まで絵が届いている形。 外側の空きが無くなります。
空きが無いことも、置き方の一つです。 抜けているわけではありません。
そこだけ空きが無いページがあれば、前後と見比べられます。
並べる側のことは扱わない
ここにあるのは、空きを眺める側の話だけです。
どれくらい空けるか、どう配置するか、紙面をどう区切るか。そのあたりは紙面を組む人の領分で、ここでは踏み込みません。
上下の二段を、空け方の見本として受け取らないでください。 見え方の差だけを取り出すために、他をそろえて置いてあります。
組む側のことを知りたくなったら、その向けの案内を探すのが早道です。
見開きをまたぐ空き
本を開いたとき、真ん中にも空きができます。
綴じのところで、左右のページが分かれます。 ここもコマとコマのあいだになります。
左右をまたいでコマが置かれることもあります。 そのときは、真ん中の空きが絵の中に入ります。
めくるところの空きは、ほかの空きより大きくなります。 紙をめくる時間が入るためです。
電子で読むと、見え方が変わることがあります。 一ページずつ表示されると、真ん中の空きが出ません。
どの読み方でも、コマの並びそのものは変わりません。
言葉のないコマを読む記事との線引き
取り違えられそうな記事があるので、まず線を引いておきます。
言葉のないコマを読む記事は、コマの中を見ています。 あちらが扱うのはやり取りの途中に置かれた、言葉のない面のほうです。
ここで見るのは、コマの外にある空きです。 何も描かれていない場所そのものの話なので、別の持ち場になります。
明るさと暗さを読む記事とも重なりません。 そちらは面の中の濃さが中心でした。
空き・幅・中身を見る
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 空き | 前後と比べたか |
| 幅 | 一つに決めてないか |
| 中身 | 空だと見たか |
| 速さ | 自分で決めたか |
| 作り | 読む話に留めたか |
手元の一ページで空きを見る
本棚から一冊取って、開いたページの空きだけを眺めてみます。
どこか一か所だけ広い、あるいは全部そろっている。どちらでも、気づいたことを一つ言葉にしてみます。
次に同じページを読むとき、その一か所が前より効いて見えます。 それだけで十分です。