COMISTA JOURNAL漫画を描く

完成しない読み切り漫画を仕上げるための進め方

公開日

読み切り漫画を描き始めたのに途中で止まってしまう人向けに、完成しない原因を整理し、ネーム・作画・修正を最後まで進める7つの方法を解説します。

「完成しない読み切り漫画を仕上げるための進め方」を表したイラスト

読み切り漫画が完成しないのは、才能より「途中で判断することが多すぎる」から

「よし、今回は絶対に完成させるぞ」と思って描き始めたのに、数ページで手が止まる。

ネームを直して、1ページ目を描き直して、気づけば新しく思いついた漫画のほうが面白そうに見えてくる。これ、経験ある方は多いんじゃないでしょうか(笑)。

やる気が足りないわけでも、画力が足りないわけでもありません。読み切りを1本描くあいだ、「これでいいのか」と判断する場面が異常に多いのが原因です。構成、ページ数、コマ割り、セリフ、線の入れ方、仕上げの度合い。どれも正解が見えないまま、毎ページ判断を求められます。

判断が多いほど、迷う回数も増えます。迷っている時間は進んでいる感じがしないので、だんだん「別の作品のほうが早く描けそう」に見えてくる。ここまで来ると、もう内容の問題ではありません。

この記事は「上手く描く方法」の話ではありません。いま手元にある読み切りを、最後まで出し切るための進め方です。

読んでいただきたいのは、描き始めた読み切りが手元にあって、途中で止まっている方です。 原因の切り分けから、工程ごとの残作業の数え方、公開の最低ラインの決め方までを、この1本で扱います。

手が止まる5つの原因を切り分ける

対策の前に、自分がどこで止まっているかを見ておきます。原因が違うと、効く手も変わります。

途中で止まる5つの原因を段階的に並べた図。完成度の上げすぎ、ネームの直し続け、話の拡大、工程の同時進行、基準の不在
当てはまるものが複数あっても大丈夫です

1. 最初から完成度を上げすぎている

1ページ目だけ妙に描き込まれている原稿、よく見ます。気持ちはすごく分かります。最初のページはいちばんテンションが高いので、つい丁寧にやってしまう。

ただ、その完成度を最後まで保とうとすると、残りのページ数ぶんだけ同じ労力がかかります。30ページの読み切りなら30倍です。序盤で力を使い切ると、中盤で息切れします。

2. ネームを途中で直し続けている

ネームは直せば直すほど良くなる気がします。実際、直した直後は良く見えます。

でもこれ、前の版と比べているだけのことがあります。1時間前の自分より良く見えるのは当たり前で、それが読者にとって良くなったかは別の話です。直し始めるとキリがなくなるのは、比較の相手が自分だからです。

3. 話を大きくしすぎている

描いているうちに設定が増えて、キャラクターが増えて、読み切りのつもりが連載の第1話みたいになってくる。これもよくあります。

話が大きくなると、必要なページ数も増えます。ページ数が増えると、完成までの距離が遠くなる。遠くなるほど、途中でやめやすくなります。

4. 作業工程を全部同時にやっている

ネームを考えながら下描きして、線を入れながらセリフを直して、そのついでにトーンも試す。一見すると効率が良さそうですが、実際は1ページごとに全部の判断をやり直している状態です。

頭の切り替えにも時間がかかります。同じ作業をまとめてやったほうが、結果的に速く終わります。

5. 「完成」の基準が決まっていない

これがいちばん多いかもしれません。どこまでやったら終わりなのかを決めずに描き始めると、終われません。終わりが決まっていないものは、いつまでも直せてしまいます。

読み切り漫画を完成させる7つの進め方

ここからが本題です。順番に全部やる必要はありません。自分が止まっているところに効きそうなものから試してください。

1. まず「最後まで通ったネーム」を作る

粗くていいので、最初から最後までつながったネームを1本作ります。途中で止まっているネームを磨くより、雑でも最後まで通っているネームのほうが価値があります。

最後まで通すと、話の全体像が見えます。全体が見えて初めて「ここは削れる」「ここが足りない」が分かります。前半だけ何度も直していると、この判断ができません。

ネーム・下描き・ペン入れ・仕上げを1周目は仮完成で通し、2周目でまとめて直す流れの図
1周目は通すことが目的。直すのは2周目にまとめる

2. 描ける場面から先に進める

順番どおりに描かなければいけない決まりはありません。いちばん描きたい場面、頭の中でもう出来上がっている場面から手をつけて構いません。

描ける場面を描いていると、作業が前に進みます。進んでいる感覚があると、続けやすくなります。手が止まりやすい場面は、周りが埋まってから戻ってくるほうが決めやすいこともあります。

3. 1周目は「仮完成」でいい

線が荒くても、背景が空でも、トーンが貼っていなくても、最後のコマまで到達させることを優先します。

1周通すと、作品としての形が見えます。この状態から直すのと、途中まで完璧なものを直すのとでは、判断のしやすさがまったく違います。前者は全体を見て直せますが、後者は「この先どうなるか分からないまま」直すことになります。

4. 修正回数に上限を作る

「ネームの直しは2回まで」のように、直す回数を先に決めてしまう方法です。回数を使い切ったら、良し悪しに関わらず次の工程へ進みます。

回数は2回でも3回でも構いません。大事なのは数字そのものではなく、「終わりが決まっている」ことです。 上限が無いと、直すこと自体が作業になってしまいます。

5. 1日単位ではなく「工程単位」で進める

「今日は3ページ描く」という決め方だと、調子の悪い日に計画が崩れます。崩れると立て直しが面倒になって、そのまま止まりがちです。

代わりに「下描きを全部終える」「ペン入れを全部終える」のように、工程で区切ります。同じ作業が続くので頭の切り替えが減り、どこまで終わったかも分かりやすくなります。

6. 作品の規模を途中で小さくしていい

描いているうちに「これ、40ページでは終わらないな」と気づくことがあります。そのとき、話を削るのは負けではありません。

エピソードを1つ減らす。キャラクターを1人減らす。回想を丸ごと外す。削った結果として完成するなら、そのほうがずっと良いです。削った要素は次の作品で使えます。

7. 最後に「公開できる最低ライン」を決める

出す前に、自分にとっての最低ラインを決めておきます。たとえば「セリフの誤字が無い」「ページが抜けていない」「読む順番が分かる」。

このラインを超えたら出す、と決めておくと、そこから先の直しは「やってもいいこと」に変わります。やらなければいけないこととやってもいいことが分かれるだけで、ずいぶん進めやすくなります。

原因と進め方を突き合わせる

7つを順に全部やる必要はない、と書きました。では自分はどれをやればいいのか。原因の側から引くと、手を付ける先が1つか2つに決まります。

止まる原因 効く進め方
完成度の上げすぎ 1周目は仮完成
ネームの直し続け 修正回数の上限
話が大きくなった 規模を小さくする
工程の同時進行 工程単位で区切る
基準が無い 公開の最低ライン

この対応は固定の正解表ではありません。 一つの原因に複数の手が効くこともありますし、原因が二つ重なっていることもあります。ここでの狙いは、7つを眺めて迷う時間を減らすことです。

当てはまる原因が複数あるときは、いちばん下流のものから先に手を付けます。 「基準が無い」を残したまま完成度の話を先に片付けても、どこで終わりにするかが決まっていないので、また同じところで止まります。逆に、公開の最低ラインを先に決めてしまえば、完成度をどこまで上げるかという判断はそれ以降ほとんど発生しません。

どの原因にも当てはまらないと感じたときは、原因ではなく残作業の量が見えていない可能性があります。 次の章で、その数え方を扱います。

架空の1本で、工程ごとの残りを数えてみる

ここからは、架空の読み切りを1本置いて考えます。実在の作品ではありません。

全24ページ、ネームは最後まで通っていて、下描きが途中まで進んでいる状態だとします。これを工程で分解すると、こうなります。

工程 残り
ネーム 通し済み
下描き 残り6ページ
ペン入れ 手つかず
仕上げ 手つかず

こう並べると、いま手をつける工程が1つに決まります。 この例なら下描きです。ペン入れも仕上げも、下描きが終わるまでは動かせません。

分解する前は「まだ半分も終わっていない」としか見えていなかったものが、分解すると「下描きの残り6ページ」という1つの塊になります。やることの量は変わっていませんが、次に手を動かす先が決まります。

数え直すのは、工程が1つ終わったときで足ります。毎日数え直すと、それ自体が作業になってしまいます。

完成度は「8割くらい」で一度手を止めていい

完成度の話をするとき、目安として「8割くらいで一度止める」という言い方をすることがあります。

これは感覚をつかむための言い方であって、8割が最適だという話ではありません。 そもそも完成度を数字で測れるものでもないですし、どこで止めるかは作品によっても人によっても変わります。

言いたいのは、残りを埋めようとして止まるくらいなら、そこで一度手を離す手もあるということです。最後の詰めは、かけた時間のわりに読者から見た違いが分かりにくくなりがちです。それよりも、1本出し切って次に進むほうが得るものは大きいはずです。

修正に上限が無いときと、上限を決めたときの違いを左右で比べた図
数字そのものより、終わりが決まっていることが効きます

出したあとに直したくなったら、次の作品で直せばいいです。同じ作者が描くので、良くなった分はちゃんと次に乗ります。

途中で別の漫画を描きたくなったらどうする?

描いている最中に、別のアイデアが降ってくることがあります。しかもそっちのほうが絶対面白い気がする。あれ、なんででしょうね(笑)。

これはたぶん、いま描いているものの粗が見えているからです。手をつけていない作品には粗が見えません。比べれば新しいほうが良く見えるのは、ある意味で当然です。

おすすめは、そのアイデアをメモに残して、描かずに置いておくこと。忘れないように1〜2行だけ書いて、いまの作品に戻ります。本当に良いアイデアなら、1本仕上げたあとでも面白いままです。逆に、そのときだけ良く見えていたものは、あとで読み返すと落ち着いて判断できます。

読み切り漫画を仕上げるための簡単チェックリスト

進める前に、次の7つが決まっているかを見てください。

読み切りを仕上げる前に確認する7項目のチェックリスト
決まっていない項目が、止まっている場所であることが多いです
進め方 決まっているか
1. ネーム 最後まで通っているか
2. 進める順番 描ける場面から始めたか
3. 1周目 仮完成まで通したか
4. 修正の上限 何回までか決めたか
5. 区切り方 工程ごとにまとめたか
6. 削ってよい要素 どれを削れるか決めたか
7. 公開の最低ライン 何を満たせば出すか

決まっていない項目があれば、そこが止まっている場所かもしれません。

結局、完成を決めているのは「終わりを先に決めたか」

ここまで原因を5つ、進め方を7つ挙げましたが、全部に共通している一点だけ持って帰っていただければ十分です。終わりが決まっていないものは終わらない、ということです。

修正の上限も、公開の最低ラインも、1周目を仮完成で通すことも、やっていることは同じです。どこまでやったら次へ行くのかを、手を動かす前に決めている。 逆に言えば、止まっている原稿はたいてい、その線が引かれていません。だから直せば直すほど良くなる気がして、いつまでも直せてしまいます。

工程分解表が効くのも同じ理由です。残りを数えると「あと少し」という感覚が具体的な数字に置き換わり、どこで終わるかが見えます。 見えていない不安と、数えたうえでの多さは、別のものです。

この3つが決まっていれば、残りは手を動かすだけになります。1本仕上げると、自分がどこで止まりやすいかも分かります。ネームなのか、下描きなのか、仕上げなのか。途中で止まった原稿からは止まった理由しか学べませんが、最後まで通した原稿は、次の1本の進め方そのものを教えてくれます。

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