会話が面白い漫画を選ぶ|掛け合いから作品を探すための見方
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会話が面白い漫画は「セリフが多い作品」のことではありません。返答のテンポ、言葉のずれ、沈黙、複数人の掛け合い、受け取り方の違いなど8つの観点から、自分が読みたい会話のタイプを整理して作品を探す方法をまとめました。
会話が面白い漫画とは何を見るのか
登場人物どうしのやり取りが読みたい。そう思って探しても、「会話が面白い」という言葉だけでは候補が絞れません。
人によって、面白いと感じる会話の形が違うからです。ぽんぽん返る掛け合いを求めている人もいれば、かみ合わないまま進む会話を読みたい人もいます。
| 見たい会話 | 注目するところ |
|---|---|
| 返答のテンポ | 間の取り方 |
| 言葉のずれ | かみ合わなさ |
| 沈黙 | 言わない時間 |
| 複数人 | 誰が誰に返すか |
| 関係の見え方 | やり取りの癖 |
そもそも「会話」はどこからどこまでか
観点を並べる前に、何を会話として数えるかを決めておきます。ここがずれると、同じ作品を見ても数える対象が変わります。
返しがあるものを会話と数えます。 一人が語り続けている場面は、量が多くても掛け合いにはなりません。
声に出ていないものも入れます。 心の中の返し、表情だけの返答、視線の動き。返したことが読み取れれば、会話として数えます。
返さなかったことも入れます。 黙る、話題を変える、席を立つ。返さないという返し方があります。
| 数えるもの | 例 |
|---|---|
| 声に出た返し | 台詞と台詞 |
| 声に出ない返し | 表情・仕草 |
| 返さない返し | 黙る・逸らす |
この数え方にすると、台詞の量では会話の多さが決まりません。 以降の八つの観点は、この数え方の上に立っています。
会話量と面白さは別のこと
先に分けておきたいところです。
セリフが多いほど掛け合いが面白い、ということはありません。 量が多くても一方が話し続けているだけなら、やり取りにはなりません。逆に、短い返しが少し交わされるだけで印象に残る作品もあります。
口数の少ない人物が出てくる作品を、会話が弱い作品として扱いません。 返さないこと自体が会話の一部になっている場合があります。
返答のテンポを見る
返すまでにどれくらい時間が置かれるかです。
間を詰めて返しが重なっていく作品と、ひと呼吸置いてから返る作品があります。前者は勢いが出て、後者は一つひとつの言葉が残りやすくなります。
速いほうがテンポが良い、という決まりはありません。 どちらが自分の読みたい速さかだけです。
テンポはコマの置き方で作られる
漫画の会話の速さは、言葉の長さだけで決まりません。 紙面の側に速さを作る仕組みがあります。
一つのコマに何往復入っているか。 同じコマに返しが重なっていれば、速く感じます。
コマとコマの間に何が挟まるか。 風景や手元のコマが一つ入るだけで、返すまでの時間が伸びます。
吹き出しの位置と大きさ。 近く並んでいれば続けて読み、離れていれば間が空きます。
言葉のずれを楽しむ
返ってはいるが、かみ合っていない形です。
相手の話を少し外して返す、別のことを考えたまま返す。このずれ自体が読みどころになっている作品があります。
笑いにつながることもあれば、距離を感じさせることもあります。ずれの大きさで作品を並べることはしません。
ずれには三つの向きがある
同じ「かみ合わない」でも、どちらがずれているかで読み心地が変わります。
| ずれの向き | 起きている事 | 残る感じ |
|---|---|---|
| 話す側 | わざと外す | 軽さ・距離 |
| 受ける側 | 別の意味で取る | すれ違い |
| 両方 | 互いに別の話 | 可笑しさ・断絶 |
わざと外す形は、返している側に余裕があります。 読んでいて軽く感じることが多くあります。
受け取り違いの形は、どちらも本気です。 あとで効いてくる種になることがあります。
両方が別の話をしている形は、笑いにも断絶にもなります。 同じ構造でも、置かれた場面で印象が変わります。
どれが優れているという話ではありません。 ただ、自分が読みたいのがどの向きかは、探すときの手がかりになります。
沈黙や間も会話の一部
返さない時間が置かれている作品があります。
言いかけてやめる、黙ったままにする、話題を変える。言わなかったことのほうが伝わる場面は、会話を読む楽しみの一つです。
言い切らずに途中で止まる言い方も同じです。最後まで言わないことで、受け取る側に残るものがあります。
複数人の掛け合いを見る
二人のやり取りと、三人以上のやり取りでは読み方が変わります。
二人なら、言葉の行き先は決まっています。複数人になると、誰が誰に向けて返したのかを追うことになります。その追いかけ自体を楽しむ読み方があります。
紹介文からでも、登場人物が何人いる作品かはある程度分かります。
会話から関係性が見える作品
同じ置き方が繰り返されると、関係の形が見えてきます。
いつも同じ側が先に話す、返しの長さが決まっている、呼び方が変わらない。こうした癖が、説明なしに関係を伝えます。
ただし、そこから何を読み取るかは受け取る側のものです。作品がそう決めているとは限りません。
説明と自然なやり取りを分ける
設定や事情を伝えるための台詞が入ることがあります。
一度にまとめて渡される形と、やり取りに混ざって少しずつ渡される形があります。読み心地は変わりますが、説明が入る作品を劣ったものとしては扱いません。
短い話数で世界を伝える必要がある作品では、まとめて渡すほうが合っていることもあります。
架空のやり取りで観点を確かめる
説明のために、この記事のために作った架空のやり取りを四つ置きます。どれも実在の作品のものではなく、台詞の引用でもありません。
四つとも、台詞の量では分けられません。 どの観点が手前に来ているかで、読み心地が変わります。
試し読みで会話を確かめる
ここはほかの観点より確かめやすいところです。
控えるときに書いておくこと
気になった作品を残すときは、会話のどこが良かったのかを観点の名前で書きます。
「会話が良い」とだけ書かない。 次に見たとき、何が良かったのか思い出せません。
観点の名前を一つ書く。 テンポ、ずれ、沈黙、複数人のどれかで足ります。
どこまで読んだかを添える。 会話の癖は巻が進むと変わることがあります。
| メモの欄 | 書くこと |
|---|---|
| 観点 | 八つのどれが手前か |
| 範囲 | どこまで読んだか |
| 場所 | どこで読めるか |
試し読みだけで判断したなら、そう書いておきます。 冒頭の数ページと、その先の会話が同じとは限りません。
好きな会話を言葉にして探す
八つ全部を決める必要はありません。
「会話が面白い」とひとことで言っても、中身は八つに分かれます。今日の自分がどのやり取りを読みたいかが決まると、探しやすくなります。