漫画の群像劇とは|複数の視点を読む楽しみ
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登場人物が多いことと群像劇は別です。中心人物が複数いて、視点が移り、別々の目的が交差し、同じ出来事が別の視点から描かれる。そうした交わり方を、順位を付けずに同格で読む見方をまとめました。
人数の多さのことではない
登場人物がたくさん出てくる作品を読むと、これは群像劇だろうか、と思うことがあります。
けれど、人数が多いことと、この呼ばれ方をすることは別です。 大勢出てきても、追うのは一人だけという作品もあります。
札はすべて同じ高さに並べる
この記事の要はここです。
人物の札を、上下に積まずに横へ並べます。 上に置いた人が偉い、という形にしないためです。
札の大きさもそろえます。 大きく描いた時点で、そこが中心だと読めてしまいます。
線の太さも変えません。 関係の強さを測る図ではありません。
隣どうしだけでなく、離れた二人がつながることもあります。 その弧が見えると、交わり方が分かります。
交わり方を読む六つの軸
| 見る軸 | 何を見るか |
|---|---|
| 中心人物 | 何人いるか |
| 視点の移り | どこで変わるか |
| それぞれの目的 | 同じか別か |
| 関係の交差 | どこで交わるか |
| 別視点の同じ場面 | 二度描かれるか |
| 流れの合流 | 最後に集まるか |
六つがそろって初めてこの呼び名、という条件表ではありません。 いくつかしか当てはまらない作品もあります。
軸ごとに別々に控えます。 まとめて一言にすると、そこで食い違いが起きます。
中心人物が複数いる
話を進める人が一人ではない、というところから始まります。
それぞれが自分の事情を持っています。 誰かの助けをするためだけに出てくる人とは、置かれ方が違います。
同じ場面に全員がそろう必要もありません。 別々の場所で、別々に動いていて構いません。
視点は読み進めるうちに移る
どの人の側から見ているかが、途中で変わります。
変わったからといって、その人が偉くなったわけではありません。 見る場所が移っただけです。
移る場所を覚えておくと、話の切り替わりが分かりやすくなります。 章の変わり目と重なることもあります。
別々の目的と、関係の交差
それぞれが別のものを目指しています。 同じ目的に向かって協力しているなら、交差の楽しみは薄くなります。
別々に動いていた人たちが、どこかで関わります。 そこが交差です。
交わったあと、また別れることもあります。 一度きりの交差も、何度も交わる関係もあります。
交差の場所を控えておくと、あとで話がつながります。
同じ出来事が、二度描かれる
一度描かれた場面が、別の人の側からもう一度描かれることがあります。
同じ出来事でも、見えていたものが違います。 片方には分からなかったことが、もう片方には分かっています。
どちらが正しい見え方、ということはありません。 二つ並べて置いておきます。
覚えきれないときの読み方
全員を覚えなくても構いません、と書きました。とはいえ、読んでいる最中に誰が誰か分からなくなるのは実際に困ります。 そこで手当てのほうを置いておきます。
| 困り方 | 手当て |
|---|---|
| 名前が混ざる | 交差だけ覚える |
| 関係が曖昧 | 二人組で覚える |
| 話が飛ぶ | 章の頭に戻る |
| 読み直したい | 一人を追い直す |
名前が混ざるときは、全員を覚えるのをやめます。 覚えるのは、交わった場所に居合わせた人だけです。 交差に出てこない人は、出てきたときに覚え直せば足ります。人数分の名前を抱えずに読めます。
関係が曖昧になるときは、二人組で覚えます。 誰と誰がつながっているか。一人ずつ覚えるより、組にしたほうが残ります。 相関図が横一列に並んでいるのは、この覚え方と相性がよいからです。弧でつながっている二人を一組として拾います。
話が飛んで分からなくなったときは、章の頭に戻ります。 視点が移る場所は章の変わり目と重なることが多いので、そこを見れば「いまは誰の側から見ているか」が分かります。 前の章まで戻る必要はありません。
読み直したくなったときは、一人だけを追い直します。 全部を読み直すと同じところで混ざります。特定の人物が出てくる場面だけを拾って読むと、その人の筋が一本につながります。 それを二人分やれば、交差した意味も分かります。
分からないまま読み進めても構いません。 交わる場面では、たいてい作品の側が誰なのかを示し直してくれます。思い出せなくても、そこで追いつけます。
覚えられないことを、読み方の失敗として数えないでおきます。 覚えることを前提にしていない作りの作品もあります。交わったところだけ分かれば、話は通ります。
独立した流れが合流する
別々に進んでいた話が、終わりのほうで一つに集まることがあります。
必ず集まるわけではありません。 最後まで交わらないまま終わる作品もあります。
集まったほうが優れている、ということもありません。 集まらないこと自体が読みどころになる作品もあります。
人物に点数を付けない
こしらえた四人で読んでみる
使い方を見るために、こしらえた場面を4つ置きます。 どれも実在の作品ではありません。
四つとも、人物に順位を付けていません。 見ているのは交わり方だけです。
読み進めるときの五つ
手を動かすのは、この五つだけで足ります。
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 中心 | 複数いるか |
| 視点 | どこで移るか |
| 目的 | 別々にあるか |
| 交差 | どこで交わるか |
| 合流 | 集まるかどうか |
埋まらない欄があっても進めます。 交わるところが見えていれば読めます。
交差を見るところから
人が多く出てくる作品を読むときにすることは、多くありません。誰が主人公かを決めるのではなく、どこで交わっているかを見ること。
視点が移る場所、目的が別々であること、同じ場面が二度描かれること。それが見えれば、人数は気にならなくなります。
そして、全員を覚えなくても構いません。 交わったところだけ覚えておけば、話はつながります。