考えさせられる漫画を探す|作品が投げかける問いで選ぶ
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考えさせられる作品は、難しい作品や重い作品のことではありません。選択・関係・価値観・立場・ルール・過去という6つの問いに分け、作品に描かれていることと読み取った問いを分けて書く選び方をまとめました。
「考えさせられる」を難しさで選ばない
読み終わったあと、しばらく何かを考えている。そういう作品を探したいときがあります。
ただ、探し方を間違えやすいところでもあります。難しそうな作品、重そうな作品を選べばいい、と思ってしまいがちです。 実際には、読みやすい作品を読んだあとで何日も考えていることがあります。
分かれ目は、難しさではありません。その作品が何かを問いかけていて、こちらが答えを出せずにいるかどうかです。
作品の中心にある問いを見る
探すときに役立つのは、テーマ名ではありません。その作品が何を問いかけているかという、問いの形です。
紹介文に「家族を描いた作品」と書かれていても、それだけでは何を考えることになるのか分かりません。家族だから分かり合うべきなのか。 ここまで下りると、自分が読みたい話かどうかが決まります。
「仕事の話」も同じです。働くことと暮らすことの、どちらを優先するか。 ここまで下ろすと、急に具体的になります。
問いの種類を6つに分ける
問いは、だいたいこの6つに収まります。
| 問いの種類 | 見るポイント |
|---|---|
| 選択 | どちらを選ぶか |
| 関係 | 誰とどう関わるか |
| 価値観 | 何を大切にするか |
| 立場 | 誰から見るか |
| ルール | 決まりと気持ち |
| 過去 | 過去をどう扱うか |
この6つは並列です。どれかが高級で、どれかが入門という並びではありません。 次の2つの章では、そのうち2つを例として少し詳しく見ます。残りの4つが軽いという意味ではありません。
選択
二つ以上の道があって、どちらにも理由がある形です。
関係
誰かとどう関わるかが問われる形です。近づくのか、距離を置くのか。
価値観
何を大切にするかが人によって違う形です。ぶつかったときに、どちらも間違っていません。
立場
同じ出来事が、見る人によって違う意味になる形です。
ルール
決まりと、目の前の人の事情がぶつかる形です。
過去
済んだ出来事をこれからどう扱うかが問われる形です。
なお、意外な展開や隠されていた事情があるかどうかは、ここでは見ません。仕掛けがあることと、問いが残ることは別です。
テーマ名を問いの形へ言い換える
紹介文に書いてあるのは、たいていテーマ名です。家族、仕事、友情、進路。これらは題材の名前で、そのままでは何を考えることになるのか分かりません。 だから読む側で、問いの形へ言い換えます。
言い換え方は決まっていて、べきなのか、どちらを選ぶか。この二つの形にするだけです。
| テーマ名 | 問いの形へ |
|---|---|
| 家族 | 分かり合うべきか |
| 仕事 | 何を優先するか |
| 友情 | 距離をどう取るか |
| 進路 | 誰が決めるのか |
| 過去 | 忘れてよいのか |
言い換えると、自分が読みたい話かどうかが決まります。 家族の話が読みたいかどうかは曖昧ですが、「分かり合うべきか」を考えたいかどうかは、はっきり答えられます。テーマ名では絞れなかったものが、問いの形にすると絞れます。
一つのテーマから、複数の問いが立ちます。 家族なら「分かり合うべきか」のほかに「どこまで責任を負うか」「離れてよいのか」も立てられます。どれで読みたいかを一つ選べば、同じ家族ものでも当たりが変わります。
そして、言い換えたのはこちらだということを忘れないようにします。 紹介文には書かれていない言葉なので、読んでみたら別の問いが中心だった、ということは普通に起きます。 それは外したのではなく、問いがもう一つ見つかったということです。
分岐する問いの見方
選択の問いを例に、見方を確かめます。
分岐があるとき、ついどちらが正しいかを決めたくなります。 でも、読む前の段階でそれを決めてしまうと、作品を読む意味が薄くなります。
見るのは、どちらにも理由があるかどうかです。 片方に理由がない分岐は、迷う場面にはなりません。両方に成り立つ言い分があるからこそ、読んでいるあいだ考えることになります。
これは他の5つでも同じです。両側に理由があるか。 それだけを見ておけば足ります。
立場によって見え方が変わる
同じ場面が、誰の側から見るかで違う意味になる形です。
読んでいるあいだに視点が移ると、さっきまで理解していたはずの場面が違って見えてきます。同じ出来事なのに、見る場所を変えると別の話になる。 ここが残ります。
大事なのは、どの立場が正しいかを決めないことです。 決めた瞬間に、他の立場は間違いになってしまいます。どれも成り立つ、という状態のまま置いておくほうが、考える時間は長く続きます。
問いと作者の主張を混ぜない
ここは注意が要るところです。
問いを言葉にすると、それが作品の主張のように見えてきます。でも、問いを言葉にしたのはこちらであって、作品がそう言ったわけではありません。
たとえば、こう分けます。
作品内で確認できること — 二人が別々の選択をする。
問いとして読むなら — 同じ目標を持つことが、関係の条件なのか。
上は描かれていること、下はこちらの整理です。この2つを続けて書くと、下も作品の内容のように読めてしまいます。 分けたまま置いておきます。
中心の問いと描写注意をメモする
探すときに使える形はこれだけです。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 確認できること | 描かれていること |
| 問い | 読み取った問い |
| 描写注意 | 必要なときだけ |
| 答え | 書かない |
答えの欄は作りません。 埋めたくなって調べてしまいますし、埋めた瞬間に自分の整理が作品の結論に変わってしまいます。
「考え続けた」だけでは、あとから読み返しても何のことか分かりません。何について考えたのかまで書いておくと、次に同じ方向の作品を探すときに使えます。
重い題材ほど深いわけではない
ここも取り違えやすいところです。
題材の重さと、問いの残り方は別の軸です。重い題材を扱っていても問いが残らない作品はありますし、その逆もあります。
描写注意を確認して読む
問いのある作品には、扱いに配慮が要る描写が入ることがあります。
暴力、差別、いじめ、貧困、病気、亡くなること、家庭の事情、立場を利用した行為、ひとりになること、災害、罪に関わる出来事。こうしたものが描かれることがあります。
これは作品の欠点ではありませんし、逆に価値でもありません。 自分が今それを読める状態かどうか、というだけの話です。
架空例で問いの見つけ方を見る
二つの欄がどう埋まるのか、状況を三つ並べます。いずれもこの記事で組み立てたもので、実在の作品とは関係ありません。
3つとも、確認できることの欄には「描かれている状況」しか書いていません。 問いのほうはこちらが言葉にしたもので、別の問いとして読むこともできます。
問いを探す前の5項目
開く前に、さっと見ておきたいところです。
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 問い | 何について考えるか |
| 事実 | 描かれていることか |
| 断定 | 主張にしていないか |
| 描写 | 苦手な題材はないか |
| 期待 | 深さを求めていないか |
結局、探しているのは「難しい作品」ではなく「答えを出せない問い」
この方向でいちばん多い外し方は、難しそうな作品や重そうな作品を選んでしまうことです。 実際には、読みやすい作品を読んだあとで何日も考えていることがあります。難しさは読んでいる最中の負荷で、考えさせられるのは読み終わったあとの話なので、そもそも別のものです。
分かれ目は、両側に理由があるかどうかです。 どちらを選んでも成り立つ、どの立場からも筋が通る。片方に理由がない分岐は、読んでいるあいだ迷う場面になりません。 題材が重いかどうかではなく、ここだけを見れば足ります。日常の小さな選択でも、両側に理由があれば問いは成立します。
そして探すときは、テーマ名を問いの形へ言い換えてから紹介文を読みます。 家族の話が読みたいかは曖昧でも、分かり合うべきかを考えたいかははっきり答えられる。テーマ名で絞れなかったものが、問いの形にすると絞れます。
読んだあとに書くときは、描かれていたことと読み取った問いを分けます。 問いを言葉にしたのはこちらであって、作品がそう言ったわけではありません。混ぜて書くと、自分の整理が作品の主張のように見えてきます。 答えの欄は作らないまま残しておくと、時間をおいて読み返したときにまた考えられます。
問いは、決着させないほうが長く使えます。