緊張感のある漫画を探す|追跡・駆け引き・時間制限
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緊張感は怖さのことではありません。追跡・駆け引き・時間制限・隠れる・情報不足・選択という6つの要素に分け、何が制限されていて何が分からないのかまで下ろして作品を選ぶ方法をまとめました。
緊張感は「怖さ」だけではない
息を詰めて読むような作品が読みたい。そう思って探すと、怖い作品ばかりが出てくることがあります。
でも、緊張感は怖さから来るとは限りません。閉館時刻が近づいているとか、相手が何を考えているか分からないとか。 何も恐ろしいものが出てこなくても、ページをめくる手は速くなります。
分かれ目は、何かが制限されているかどうかです。 時間、逃げ道、見える範囲、言えること。制限があるほど、次の一手が重くなります。
緊張の要素を6つに分ける
まず、何が緊張を作っているのかを分けます。
| 緊張の要素 | 見るポイント |
|---|---|
| 追跡 | 距離・逃げ道 |
| 駆け引き | 相手の意図 |
| 時間制限 | 残り時間 |
| 隠れる | 見つかる条件 |
| 情報不足 | 分からないこと |
| 選択 | 次の一手 |
この6つは並列です。どれかが強くて、どれかが弱いという並びではありません。
紹介文を読むときは、この6つのどれが動いているかを探します。ハラハラする、と書いてあるだけでは、どの種類なのかが分かりません。
追跡で生まれる緊張
誰かから逃げる、あるいは誰かを追う形です。見るのは、暴力の激しさではなく状況のほうです。
距離が縮まっているか
離れているのか、近づいているのか。距離が変わっていくこと自体が、そのまま緊張の目盛りになります。
逃げ道が減っているか
選べる道が多いうちは、まだ余裕があります。減っていくほど、一つの判断の重さが増していきます。
相手の位置が分かるか
見えているのか、見えていないのか。見えていないほうが不安は大きくなりますが、見えているから安心とも限りません。
見つかる条件は何か
何をすると見つかるのかが決まっている形です。音を立てる、明かりを点ける、その線を越える。条件がはっきりしているほど、読む側も一緒に気を張ります。
駆け引きで生まれる緊張
互いに相手の出方を読み合う形です。
相手の意図を読む
言葉の裏に何があるかを探る形です。会話が丁寧なほど、かえって張り詰めることがあります。
情報を隠す
こちらが持っているものを見せない形です。隠していること自体は、読者には見えています。 だから、いつ知られるのかが気になります。
次の行動を予測する
相手が次に何をするかを読む形です。予測が当たるかどうかより、読み合っている状態そのものが緊張になります。
なお、頭が良い人物ほど上、ということはありません。 天才同士ほど面白い、知略ものほど高尚、といったこともありません。読み合いが成立していれば、扱う内容が何であっても緊張は生まれます。
時間制限で生まれる緊張
いつまでに、という条件が付いている形です。
時計、締切、日没、到着時刻、残りの回数。形はいろいろですが、共通しているのは終わりが決まっていることです。
見方は3つあります。残り時間が数字や図で見えている形。期限だけが示されていて残りは分からない形。そして、期限があること自体は分かっているのに、いつなのかが分からない形。
ただし、残り時間が短いほど作品として良い、ということはありません。 一日単位の締切でも、一分単位の締切と同じだけ張り詰めることがあります。
隠れることで生まれる緊張
見つからないこと自体が条件になっている形です。
追跡と近いようで、少し違います。追跡は距離が動きますが、隠れるほうは動かないことが条件です。 動かずにいる時間が長いほど、こちらの息も詰まります。
見るのは、何をすると見つかるのかです。 音、明かり、影、痕跡。条件が具体的なほど、読んでいるあいだの注意の向け方が決まります。
情報不足で生まれる緊張
何が起きるか分からないこと自体が、緊張を作る形です。
相手がどこにいるか分からない。次に何が起きるか分からない。誰の言うことを信じてよいか分からない。どれも、足りないのは情報であって、危険の大きさではありません。
これは謎解きとは別のものです。謎解きは答えに向かって進みますが、こちらは分からないまま進みます。 分からない状態がずっと続くこと自体が読みどころなので、解決を待たずに読めます。
一手で状況が変わる緊張
次に何を選ぶかで、その後が変わっていく形です。
選んだあとに戻れないと分かっていると、選ぶ場面そのものが張り詰めます。選択肢が多いことより、戻れないことのほうが効きます。
この形は他の5つと組み合わさることが多いところです。時間制限のある選択、情報が足りないままの選択。重なるほど、一手の重さが増していきます。
張り詰めたままか、緩む場面があるか
六つの要素は、何が緊張を作るかの話でした。もう一つ、その緊張がどう続くかという軸があります。 同じ要素でも、続き方が違うと読んだあとの疲れ方が変わります。
張り詰めたまま最後まで行く作品があります。 逃げ道が減り続ける、残り時間が戻らない。緩む場面が置かれていないので、読み始めたら一気に読むことになります。 時間が取れる日向きです。
緩む場面を挟む作品もあります。 一度安全な場所に着く、相手が去る、夜が明ける。緩んだぶん、次に張り詰めたときの落差が大きくなります。 息継ぎがあるので、区切って読めます。
波が繰り返される作品もあります。 見つかりそうになっては逃れ、また近づく。追跡や隠れるの要素と相性がよく、同じ形の緊張が何度も来ます。
そして、緩まないまま終わる作品もあります。 解決が描かれず、張り詰めたところで閉じる。情報不足の要素が中心にある作品で起きやすく、読後まで落ち着かない感じが残ります。
紹介文から読み取れるのは、ここまでです。 期限や逃げ道が書かれていれば張り詰め続ける形、場面が複数書かれていれば緩みがある形、という程度の見当は付きます。続き方が分からないときは、読める時間を長めに見ておくほうが安全です。
静かな場面でも緊張は作られる
緊張感とアクションの量は、別のものです。
誰も走っていない、誰も戦っていない。それでも張り詰めている場面はあります。向かい合って座っているだけの会話、誰かを待っているだけの時間、黙って様子をうかがっている場面。 どれも動きはありませんが、制限はあります。
なお、展開が反転するかどうかや、隠されていた事情があるかどうかは、ここでは見ません。仕掛けがあることと、その場が張り詰めていることは別です。 この記事が扱うのは緊張している最中で、そのあとどうなるかは扱いません。
描写注意を確認して読む
緊張感のある作品には、扱いに配慮が要る描写が入ることがあります。
暴力、罪に関わる出来事、閉じ込められること、追われること、脅されること、災害、亡くなること、立場を利用した行為、つきまとい、戦いの場面。こうしたものが描かれることがあります。
これは作品の欠点でも価値でもありません。 自分が今それを読める状態かどうか、というだけの話です。
架空例で緊張の違いを見る
六つの要素がどう場面になるのか、四つ書いてみます。いずれもこの記事で考えたもので、実在する作品のものではありません。
4つとも、動きの激しさはばらばらです。 Dはただ待っているだけですが、分からないことが多いぶん張り詰めます。要素が違えば、読んでいるときの感じ方も変わります。
緊張の種類を選ぶ前に見る5点
開く前に、さっと見ておきたいところです。
| 見るところ | 確認すること |
|---|---|
| 要素 | 6つのどれか |
| 制限 | 何が制限されるか |
| 不明 | 何が分からないか |
| 描写 | 苦手な題材はないか |
| 期待 | 強さを求めていないか |
結局、緊張感は「危険の大きさ」ではなく「制限の有無」で決まる
この方向でいちばん多い外し方は、危険の大きさで探してしまうことです。 怖いほど、暴力が激しいほど、人が死ぬほど緊張する。そう考えて探すと、刺激の強い作品ばかりが並びます。そして、それは求めていたものとは限りません。
張り詰めるのは、何かが制限されているときです。 時間、逃げ道、見える範囲、言えること。制限があれば、向かい合って座っているだけの会話でも張り詰めますし、制限がなければ、どれだけ危険でも緊張しません。 静かな場面でも緊張が作られるのは、この理由です。
だから紹介文では、何が制限されているかを探します。 期限が書かれているか、逃げ場のない場所が書かれているか、相手の意図が伏せられているか。ハラハラすると書いてあるだけでは、六つのどれなのか分かりません。 そこまで下ろすと、紹介文の見方が決まります。
そして、続き方も一緒に見ておきます。 張り詰めたまま行くのか、緩む場面があるのか。読める時間と噛み合っていないと、途中で止めることになって緊張が切れます。 この形式では、読む状況も選択のうちです。
追われている場面が読みたいのか、読み合いが見たいのか、時間に追われる感じが欲しいのか。動きの多さで選ばないほうが、当たる範囲は広がります。